第12号

皆さま、こんにちは、未踏通信編集局です。未踏通信 第12号をお送りします。
この未踏通信は、未踏OBからの技術関連コラム、未踏関連イベント情報、未踏関連の話題等、未踏事業に関わる情報をお知らせするメールニュースです。随時お送りしておりますのでご愛読ください。

TECHNOLOGY EYE(未踏OBが見た最新技術動向のコラム)

「プログラミング言語Egison紹介」 江木 聡志さん(2011年度未踏スーパークリエータ)

未踏2011年度の江木聡志です。未踏では、プログラミング言語Egisonの開発を行いました。現在は楽天技術研究所に所属し、Egisonの開発を進めています。このコラムでは、「形式化」という観点から、Egisonについて紹介したいと思います。

形式化は理論コンピュータサイエンスにおける最も重要な概念の1つです。なぜなら、単純な命令列しか理解できないコンピュータは、形式化されていることしか実行できないからです。
形式化できていない最も重要な対象に数学的推論があります。それゆえ現在ではまだ、中学や高校で習うような数学の理論でさえ、コンピュータで自動で構築する方法は知られていません。
私は最初、数学的推論の形式化を目指し研究を始めたのですが、そのうちに数学的推論の形式化のためには、まず先に我々の数学的認識を形式化する必要があると考えるようになりました。既存のプログラミング言語では、人間の考えをコンピュータ向けに翻訳して記述せねばならない場面が未だにあります。そのような表現の上では数学的推論の形式化は難しいと考えたのです。
私は、特定のデータ型のデータしか直接的な記述で操作できないということを、既存の言語の最も重大な問題として認識していました。例えば、既存の言語は、リストに対するパターンマッチはある程度得意ですが、要素の順序構造を無視する集合や多重集合に対するパターンマッチは難しいのです。そのため、単純なポーカーの役判定さえ、簡潔に記述することができません。
Egisonはこの問題を解決したプログラミング言語です。Egisonは、パターンの表現力を強力にしてかつ、プログラマが集合や多重集合を含む一般的なデータ型それぞれに対しパターンマッチの方法を記述できるようにすることにより、アルゴリズムのより直接的な表現を実現しました。
Egisonについては以下のWebサイトにぜひ訪れてみてください。Egisonによるプログラムのデモも多数用意しております。

▼Egisonのホームページ
www.egison.org/ja/
▼Egisonのメーリングリスト
www.egison.org/ja/community.html

EVENT INFORMATION (未踏関連イベントのご案内)

2015年2月21日(土)・22日(日)「「2014MITOU Final Reports(第21回(2014年度)未踏事業成果報告会)」開催

 来る2015年2月21日(土)・22日(日)の両日、「第21回(2014年度)未踏事業成果報告会」を開催いたします。

今回から「2014MITOU Final Reports」と銘打ち、プレゼンテーションの質をより充実させて、多くの方々に未踏事業で創りあげた成果の最終形を見ていただくイベントとして実施いたします。

2014年度未踏事業で採択され、提案したアイディアを現実の形にすべく、昨年7月から今年3月までの約9ヶ月にわたり、担当PMの熱心な指導のもと開発が続けられています。そして、いよいよその成果物を発表する晴れの舞台がこのイベントです。

2014年度の採択は14件のプロジェクト。髪の毛で音を感じるデバイスから、ロボットバー、アニメ、動画ニュース、SNS、ダンス、三味線、メイク関連など、実に多彩な分野のアイディアを実現させた成果を披露してくれます。

一般に公開されたイベントですので、ぜひ周囲の方々とお誘い合わせの上、ご来場ください。合わせて、2月22日(日)の終了後には、採択者やPMをはじめ、未踏OB、一般企業の方々が会する未踏交流会もございますので、ぜひご参加ください。

なお、当日会場にお越しになれない方も、2日間を通じてニコニコ生放送で実況を配信する予定です。配信URLは、後日下記のページにご案内する予定ですので、ご確認の上ご覧くだいさい。

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「2014MITOU Final Reports」 第21回未踏事業成果報告会 概要
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第1日目
開催日時:2015年2月21日(土) 10:20~16:45 (9:45受付開始)
開催場所:アキバホール
所 在 地:東京都千代田区神田練塀町3 富士ソフト秋葉原ビル
www.fsi.co.jp/akibaplaza/cont/info/access.html
定  員:120名
参  加:無料(一般公開形式、事前申込み制)
第2日目
開催日時:2015年2月22日(日) 10:20~16:40 (9:45受付開始)
開催場所:大手町ファーストスクエアカンファレンス
所 在 地:東京都千代田区大手町 1-5-1
ファーストスクエア イーストタワー2F
www.1ofsc.jp/access/
入館方法:当日は休日の為、イーストタワーの地上の1階エントランスから
ご入場ください。(地上の永代通り側の1階エントランスです)
定  員:120名
参  加:無料(一般公開形式、事前申込み制)

※2月22日(日)終了後17:00より未踏交流会(事前申込み制、参加費当日会計)

▼第21回未踏事業成果報告会ページ
www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/2014/seikahoukoku21th.html
▼参加お申込み
https://ipa-rcpt.ipa.go.jp/event_entry/index/59/
(先着順で受付けし、定員に達した場合はお断りする場合もあります)
▼2014年度未踏事業採択者と採択テーマ名、概要は以下からご参照ください。
www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/2014/koubokekka_index.html

2015年2月14日(土) セキュリティ・キャンプフォーラム2015開催

 来る2月14日(土)、未踏を担当するイノベーション人材センターでは、セキュリティ・キャンプ実施協議会との共同で「セキュリティ・キャンプフォーラム2015」を開催いたします。

このフォーラムは、セキュリティ・キャンプ修了生、講師、セキュリティ・キャンプ実施協議会会員企業、そしてセキュリティに興味がある一般の皆さまにも広くお集まりいただき、相互交流を深めていただくことなどを目的としています。
キャンプ修了生、会員企業、政府機関の方々の講演や、セキュリティ・ミニキャンプの紹介のほか、「テクニカルセッション」と称した技術的な内容を扱う参加型のプログラムも設けるなど、大変に充実した内容となっています。

開催日時:2015年2月14日(土)
メイン会場:13:00~16:10(受付開始12:30~)、
テクニカルセッション:15:30~18:00
開催場所:フクラシア品川クリスタルスクエア(品川駅港南口から徒歩8分)
http://www.fukuracia-shinagawa.jp/access/
主  催:独立行政法人情報処理推進機構、セキュリティ・キャンプ実施協議会
定  員:130名
参  加:無料(事前登録制)

▼「セキュリティ・キャンプフォーラム2015」ページ、お申込みページへ:
www.ipa.go.jp/jinzai/camp/2014/forum2015.html
▼プログラムの詳細
www.ipa.go.jp/files/000043341.pdf

EVENT REPORT (未踏関連イベント・リポート)

「未踏交流会Vol.15」開催報告
自分の技術力で社会を変えたい—未踏OBたちの挑戦

昨年12月16日に、秋葉原のダイビル5Fにあるカンファレンスフロアで、未踏交流会が開催されました。今回の講演は、未踏OB3名の方々による活動報告です。

スケルトニクス株式会社の代表取締役CEOの白久レイエス樹さんは、ロボットとの出会い、スケルトニクスという動作拡大型スーツへの想い、スケルトニクスでビジネスをしようとした決心など、起業してからの苦労話を語りました。
早稲田大学の大学院生でありながら、C++ライブラリ「Siv3D」の開発に取り組む鈴木遼さんは、誰にでもプログラミングを楽しんでもらうことの重要性と、それを実現するSiv3Dの開発の経緯と今の利用状況を報告しました。
さらに株式会社Emakiの取締役CTOであり、未踏で予定管理アルゴリズムの研究に取り組んだ竹井悠人さんは、スタートップ企業を取り巻く状況と、自分の夢のこれからについて語りました。短い時間ではありましたが、来場者の皆さんは、技術こだわり、夢を追いかける若者たちの熱い話に耳を傾けていました。
その後、恒例の懇親会が行われ、未踏OBの岩崎健一郎さんから、プロトタイピングの楽しさを伝えるプロトタイピング講座の最新情報と、プロトタイピングの普及を目的としたプロトタイピング協会の設立報告に関するショートプレゼンがあり、プロトタイピング講座に参加したIPAの未踏事務局の高橋秀典から体験談が披露されました。また、未踏OBの竹淵瑛一さんから、ギターを改造した自作のリアルタイム楽器アプリが紹介され、技術が音楽の世界を広げていく可能性が示されました。

  • 講演 白久レイエス樹さん
  • 講演 竹井悠人さん
  • 講演 鈴木遼さん

MITOU TOPICS (未踏関連の話題)

情報処理学会の「ソフトウエアジャパンアワード2015」
今年も未踏OBが受賞、江木聡志さん。

冒頭のコラムにもご登場いただいた、2011年度のスーパークリエータ江木聡志さんが、このほど情報処理学会が毎年選定する「ソフトウエアジャパンアワード2015」を受賞しました。

アルゴリズムをより直感的に記述できる全く新しいプログラミング言語の理論を構築し、設計・開発を進めているプログラミング言語Egisonを通して、日本発で産業界を含む世界的なコミュニティを開拓している、との評価での受賞です。
ソフトウエアジャパンは、2004年より産業界(実務家)向けに毎年度情報処理学会が開催するイベントで、ソフトウエアジャパンアワードは、日本発の世界に誇るソフトウエアの研究者、開発者、技術者で、情報技術分野において特に産業界への功労がありその業績が顕著であると共に、今後の産業界への活躍が期待できる人材へ贈呈されるものです。
今年は、2月3日(火)にタワーホール船堀で行われる「ソフトウエアジャパン2015」のメインセッションの第3セッション「ソフトウエアジャパンアワードセレモニー」において表彰されるとともに、18:20~18:35で「Egison−表現の新たな抽象化の発見」というタイトルで受賞スピーチが行われます。
近年だけでも、2014年には登大遊さんと住井英二郎さん、2013年には西川徹さん、2012年には関治之さんなど、このアワードにおける未踏OBたちの活躍は特筆にあたるものがあると言えます。

▼「ソフトウエアジャパンアワード2015」のページ
www.ipsj.or.jp/award/softwarejapan_award.html
▼「ソフトウエアジャパン2015」のメインセッション・プログラムページ
www.ipsj.or.jp/event/sj/sj2015/mainprogram.html

MITOU NOW (未踏事業の近況報告)

 昨年11月17日(金)に開始された2015年度未踏事業の公募も2ヶ月が経過して、3月18日(水)の締切りまで約2ヶ月を残す時期となりました。未踏事務局では全国各地で公募説明会を実施しております。主要都市および各地の大学等を中心に、これまで16箇所で開催し、1000名近い方々にご参加いただいております。

IPAより未踏事業のご紹介と今年度の公募について、また過去のOBの事例紹介などを行っています。会場によってはPMや各地ゆかりの未踏OBなどにもご講演をいただくなど、様々なカタチで応募の呼びかけを行って参りました。毎回多くの質問をいただき、参加いただいた方々の関心の強さを感じています。

引き続き、皆さまからも、周囲の方々へのお呼び掛けをしていただければありがたく、よろしくお願いいたします。

未踏通信編集局より

2月21日、22日の二日間にわたって、今年度の未踏成果報告会が開催されます。今年度の未踏採択者たちがどんな成果を上げてくれるのか。今号の未踏通信でも未踏OBたちの活躍を取り上げていますが、こうした先輩たちに負けない素晴らしい成果が報されることが期待されています。未踏成果報告会の様子はインターネットでライブ配信されます。一人でも多くの方に、若者たちの技術へのこだわりが切り拓く未来の可能性を実感していただければ幸いです。
▼未踏通信バックナンバーは以下をご覧ください。 http://www.ipa.go.jp/jinzai/mitou/tsushin/index.html
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