「学生」・「産」・「学」の声

「学生」・「産」・「学」の声

過去4年間に渡り実施された経済産業省の産学協同実践的IT教育関連事業では、事業の有効性や成果を把握するために、各個別事業において、関係者ヒアリングやアンケートを実施した。以下のところでは、これらの各種ヒアリングやアンケートなどから、事業に参画した関係者の感想や意見等を、学生・大学関係者・企業関係者に分けて紹介する。

学生の声

学生(高専生・大学生・大学院生)に対しては、事業の事務局によるヒアリングやアンケートが実施された。ヒアリングは、各個別事業の受講学生の代表者2~3名(最大数名)に対して実施された。アンケートは、原則として受講学生全員を対象とし、教育訓練を受講した直後(受講後アンケート)と、受講の翌年度(フォローアップアンケート)に実施された。また、ヒアリングとアンケートに加えて、事業年度の年度末に実施された成果報告会では、各個別事業から1名程度(計5・6名)の学生が参加する学生パネルディスカッションが実施され、学生の考え方や教育訓練の感想等が発表された。ここでは、これらの“学生の声”から、事業の成果を示す。

事業で実施された教育訓練について

既存の授業との比較

まずは、学生に、“既存の授業と比較して、事業で実施された教育訓練が、どの程度実務に役立つと思うか”を尋ねたアンケートの結果を示す(下図)。
下図では、8割以上の学生が、「大いに役立つと思う」「役立つと思う」と答えており、事業で実施された教育訓練が、“実務に役立つ”という観点から、学生に高く評価されていることが分かる。

C511-4-11

これまでに実施された授業と比較して、今回の授業は、どの程度実務に役立つと思うか?




(H16・H17・H18年度 受講後アンケートの結果から)
※ 上記アンケートは、H16・H17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=889)

下図は、“今回の教育訓練を受講して良かったこと”を具体的に、学生に選択させた設問の結果である。これによれば、「システム開発のプロセスや手順が理解できたこと」や「企業における仕事の内容が理解できたこと」などが上位に挙げられている。

C511-4-12

今回の教育訓練を受講して良かったと思うこと

(H17・H18年度事業の教育訓練受講生に対するアンケートの結果から)
※ 上記アンケートはH17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)

アンケートやヒアリングでは、“既存の授業と比べて良かった点”について、学生受講者から数多くの意見が寄せられたが、これらの様々な意見は、以下のように集約される。

既存の授業と比べて良かった点

  1. 通常の授業や研究では、個人で開発を行うことが多いが、今回、チームでの開発を初めて体験することができ、その難しさやコミュニケーションの重要性を学んだ。
  2. 知識として学んでいたソフトウェアの開発プロセスを、実際に体験することができた。
  3. 演習の中で、これまでの授業で学んだ知識やスキルを活用することで、習得した知識やスキルが実践的なものになった(体系化された)。また、これまでに学んできた学問の意味が理解できた。
  4. これまでに授業で学んだ知識やスキルが、仕事でどのように使われるのかを実感し、学習に対する意欲が高まった。
  5. 実際に仕事で必要とされる知識やスキルを理解し、今の自分に足りないものを自覚することができた。
  6. 企業講師の話を聞き、企業での仕事の内容や雰囲気を理解することができた。また、就業に対する意欲が高まった。
  7. 通常の授業よりも、興味を持って取り組むことができ、達成感が感じられた。
  8. 入社後に必要なスキルを習得したことで、就職時に有利になると感じている。

また、以下には、“学生の生の声”として、ヒアリングやアンケートに寄せられた学生受講者のコメントを、上記の項目ごとに紹介する。

① チームでの開発やコミュニケーションの重要性に関する意見

  • チームで開発することで、一人で開発するより効率的に開発が行えるということを学んだ。
  • これまでに体験したことのないグループによる開発を体験できたのは、とても新鮮だった。また、グループによる開発を通じて、コミュニケーションの重要性が理解できた。
  • ひとつの目標の達成に向けて、チームが団結していく過程を体験でき、とても感動している。
  • 大学では、個人でプログラムを作成することが多いが、実際の企業では、システムを作成するのに1人で1から作ることはないと思うので、実際のシステム作成過程を学べるこの授業は、受けておいて損はないと思う。
  • 今回は、リーダーを務めたので、メンバーに適切に仕事を任せることの大変さを実感した。
  • 今回の講義では、どれもこれも苦労したものばかりですが、最も苦労したのが「グループで作業すること」だと思います。複数人で協力してコーディングを行うのは、今回が初めての経験でした。貴重な経験であると同時に、チームで仕事をするのは色々と大変なんだなぁ、としみじみ実感しました。
  • 今回のプロジェクトは、複数人で取り組むということに非常に大きな意義があったと思う。チーム内で技術について教え合うことができたのも有意義だった。このような経験をしたことがない大学生には、是非ともこの講座の受講を勧めたいし、次に参加する機会があればまた参加したい。

② ソフトウェアの開発プロセス等の体験に関する意見

  • 今回の授業を通して、ソフトウェアの企画、開発環境の選択、ソフトウェアの設計、コーディング、ドキュメントの作成、レビューなど、ソフトウェア開発のすべてのプロセスを、ひとつの開発プロジェクトとして関連付けて学ぶことができた。
  • 特に今回の教育訓練でよかったのは、グループでひとつの課題にチャレンジできたことと、システム開発の手順(要求定義→基本設計→詳細設計→プログラム開発→単体テスト→統合テスト→保守・運用)を学ぶことができたことである。
  • 今まで個別に身に付けてきたプログラミング技術を応用して、講義で聞いただけであったシステム開発の工程を実際に経験することができたので、非常にやりがいを感じた。
  • 大学の授業では、決められたものを決められたとおりに作るが、今回は、ユーザーを意識しながらソフトウェアを作らなければならず、その点が新鮮だった。
  • これまでに作成したものは、自分さえ分かればよかったが、他人にとっての使いやすさ(インタフェース等)も考慮する必要があるということを学んだ。
  • 例えば、ドキュメントの作り方など、企業の現場で必要とされる知識が学べたことが良かった。ドキュメントの作成は、非常に面倒だったが、修士研究にも生かせると感じている。

③ 習得した知識やスキルが体系化された、学問の意味が分かったという意見

  • 今回の授業を通じて、今まで独自に得ていた知識やスキルを、体系的に学び直すことができた。
  • 今回の教育訓練で、これまでに学んだプログラミング技術を活かすことができた。これまでは、個別の授業で学んだことがバラバラな状態であったが、それらの知識がつながった気がする。
  • これまでに学んだ組込みソフト系の講義の集大成のような内容になっていたのが良かった。
  • 今回の演習の中で、これまで学んできた情報科学の目的が、自分の中で少しずつ分かってきたような気がした。
  • 情報関連科目に関して苦手意識があったが、この実習を乗り越えたことで自信がつき、積極的に独学するようになった。
  • 今までの講義で学んできた学術寄りな分野よりも、実践的・直接的な内容であり、とても良い経験となった。学術的なものと実践的なもののバランスが重要だと思うが、今までは前者に寄りすぎてきた感があったので、バランスをとるという意味でも良かったと思う。今後もこのような機会があれば受講したいと思う。
  • 学問に即した知識と、実務に即した知識の間にはまだ隔たりがあるような気がします。どちらが優れているというわけではありませんが、学校で学んだことが社会人になってから少しでも役に立ったほうが良いと、私は思います。そういった意味で、この教育訓練は、私にとって学問と実務の橋渡しになりました。

④⑤ 仕事に必要な知識・スキルが分かり、学習や就業に対する意欲が高まったという意見

  • 自分の目標に対して必要なスキルが明確になり、勉強する分野がはっきりした。
  • 産業界で実務経験を積んだ講師によって評価されるという、普段とは異なる新鮮な環境の中で、自分が社会人になるために足りないものや、今後さらに深めていく必要がある知識・スキル等を実感することができた。
  • ロールプレイ方式の演習で疑似体験をしたことにより、技術以外の企業に入ったときに必要となる知識やスキルを学ぶことができた。また、卒業までに身に付けておくべき知識等が分かった。
  • 普段会うことができないような技術者に会って直接話をすることができ、良い経験になった。また、第一線で活躍する技術者と会って、自分の中でのモチベーションが高まった。
  • 受講する前に予想していた以上に役に立ったと感じている。社会に出る前に今回のような講座を受けていたら、組込みを目指している人は、よりしっかりとしたビジョンを描けるようになる。これまで興味のなかった人も、組込みをやりたくなるだろう。とても意義のある授業だった。
  • とても勉強になった。参加する前は自信も無く、自分の進む道にも迷っていたが、この講義を受けて自信もついたし、今求められていることもわかった。
  • この講義で学んだことが社会に出てから大いに役に立つものだと感じた。後輩にもぜひ受講を勧めたいと思った。
  • 現在学校で学んでいる内容が、実際に現場ではどういう風に使われているかということは、学んでも学びすぎることはないと思います。就職してから「学生時代に○○を真剣に勉強していれば良かった」と思う気持ちが、学生のうちから芽生えれば、とても有意義だと思います。
  • 将来の仕事をする上での目標が明確になり、就職活動の面接で上手くそれを話すことができた。
  • 私は今までIT業界に興味がなかったが、教育訓練を受講したことで希望が変わり、就職もIT業界に進むことになりました。本当に受講してよかったと思います。

⑥ 企業での仕事の内容や雰囲気が理解できたという意見

  • 産業界の講師から、現場の体験談等を直に聞くことによって、企業の中で行われている実際の仕事の内容をイメージすることができた。
  • 企業のソフトウェア開発の現場で実際に仕事をしている企業講師の話は、とても説得力があると感じた。中でも、ソフトウェア開発のトラブルに関する体験談や品質の重要性などについては、興味深い話を聞くことができた。
  • 実際の仕事の流れが分かり、仕事のおもしろさ、やりがいを感じることができた。
  • レポートを上司(上司役の企業講師)にレビューしてもらうなど、就職後に体験するような経験ができたことが良かった。上司に面会するためにアポイントを取らなければならず、会社的な雰囲気が、とても新鮮に感じられた。
  • ソフトウェア開発には、プロジェクトマネジメントなど、プログラミング以外にも重要な仕事があるということが理解できた。また、実際の現場における失敗談等、大学の先生からは普段聞けない話を聞くことができた。
  • 企業講師の実体験に基づいた豊富な知識、アイデアの豊かさに驚かされた。

⑦ 普段の授業よりも意欲的に学習することができたという意見

  • 企業研修のプロである講師の学生の興味を惹きつけるような教え方が印象的で、長時間の講座も飽きずに受講することができた。
  • “演習の中で実際にモノをつくる”、“講義で学習したことをふまえ、考えながら試行錯誤して演習に取り組む”等、通常の大学の実験とは異なる授業であったため、興味を持って意欲的に学習することができた。
  • ビジネスの場で活躍されている方々の話が聞けてとても良い経験になった。また今までのマンネリ化した受動的な授業と違い、能動的な講義だったのも非常に魅力的だった。
  • 授業の節目節目に、ドキュメントなどについて講師のチェックが入るので良い意味で緊張感を持って授業に臨むことができた。
  • とても大変だったが、それ以上にやり甲斐のある授業だった。授業を受けている間に、背筋が伸びていくのが自分でわかった。
  • 普段の大学の講義とは違った、とても刺激的で challenging な内容でした。これからの大学も、もっとこのような形態の授業を採り入れても良いのではないかと思います。
  • 短い期限内に仕上げなければいけないので大変だったが、普段の授業より達成感があった。
  • 普段体験できないような体験ができてとても良かった。でも体験するだけだったら誰でもできるので、体験して何を思ってこれからそれをどう生かしていくかが大事だと思う。こういった体験ができる機会をもっと増やして欲しい。

⑧ 就職に有利になると感じているという意見

  • 私は現在IT業界で働いているが、この講座を受講していたおかげで、就職前から働くことに対する心構えができた。就職活動直前の大学3年生・大学院1年生に、特にこの講座を勧めたい。
  • 今回の授業を受講した経験は、将来SEとして就職したときに、他の新入社員に差をつけられるものであると思う。
  • 大変為になりました。私は来年からシステム開発系の企業に就職する身ですが、就職先で「はじめてだらけ」の状態にならずに済むと思います。

○ その他

  • 内容に関して、どの部分にはどの学問が関わるのかなどが示されると、学術的な学問をどのように適用すればいいのかが判りやすく、その適用アプローチの研究にもなると思います。
  • 大変良い試みであり、今後も継続してほしいと感じた。学生の方からも、産業界に何か貢献できればお互いにとってもっと幸せな関係になれると思う。
  • 大学の講義は理論や概論が一般的で退屈であり、実践的な今回の講座は面白かった。しかし、実践的な技術はすぐに陳腐化するものであり、そればかりでも偏った知識になってしまう。今回、このアンケートで、全国で同じような講座が開かれていたことを知った。アンケートだけをインターネットで行うのではなく、全講座で使われた資料や課題やその回答をインターネットで公開して頂きたいものだと感じた。

学生にとっての負担感

実践的なIT教育を、教育機関における一つの講座として実施する場合、受講者に対する負担が、他の授業よりも大きくなる傾向があり、この点が、実施上の課題の一つとして認識されてきた。下図は、平成17年度、平成18年度の受講後アンケートで、事業で実施された教育訓練の負担を尋ねた設問の結果である。

C511-4-13
今回実施された教育訓練の負担感
(H17・H18年度 受講後アンケートの結果から)
※ 上記アンケートは、H17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=438)

上図では、「他の授業等に支障が出るほど負担が大きかった」、「負担は大きかったが、他の授業等に支障が出るほどではなかった」と答えた学生が合わせて約8割にも達している。ここでは、実践的なIT教育を実施する場合、学生に対する負担が、既存の授業よりも大きくなる傾向にあることが、数値として示されている。
以下には、「負担が大きかった」と答えた学生のコメントを紹介する。

「負担が大きかった」という学生のコメント

  • 授業時間以外の活動が多く大変であった。
  • 今回の授業の開講時期が、就職活動の時期と重なっているため、授業の事前準備等に時間を割くのが難しいことが多かった。
  • おもしろい講義だったが、年始年末に重なり、研究室の活動も忙しい時期であったため、あまり時間を割くことができなかった。それに伴い、グループの集まりも悪かった。実際に社会に出たら、その中で上手くスケジュールを組まなければならないと分かっているが、もっと忙しくない時期に受講したかった。
  • 来年からは、長期休み期間(夏休み等)を利用した集中講義といった形式での開講を望む。
  • とにかく時間が足りず、他の教科に取り組む時間を奪われた感じがあった。実務ではないのだから半年間というような短期間ではなく、一年を通してしっかりと学習・実習を行っていく過程で実務に繋がるスキルを習得したいと思った。
  • (通常の授業と比べて)突然講義のレベルが上がり、戸惑いを感じたので、もっとスムーズにこの産学協同講座へと移行して欲しかった。
  • 授業内容に対してもらえる単位が少ないような気がします。

上記では、“課題内容”“開催時期”などの他にも、“難易度”“単位数”等の面でも、改善の必要性を感じた学生がいることが分かる。また、事業の実施上の事情により、通年の授業としての実施は困難であったため、半期の授業もしくは特別授業の形式で、後期に開催される教育訓練が主流となったが、その点に不満を感じるコメントも散見された。

履修科目としての導入

次に、“今回実施された教育訓練を、学部(学科・専攻課程)の履修科目として、今後も引き続き実施すべきだと思うか”を尋ねた設問の結果を示す。

C511-4-14

今回実施された教育訓練を、自分の学部の履修科目として引き続き実施すべきか?

(H17・H18年度 受講後アンケートの結果から)
※ 上記アンケートは、H17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=438)

上図では、8割近い学生が「そう思う」と答えており、多くの学生が、事業で実施されたような実践的なIT教育を、履修科目として今後も実施して欲しいと望んでいることが分かる。
履修科目としての実施についても、様々な意見が寄せられたが、それらを整理すると、以下のようになる。

【履修科目化に賛成の理由】

  • 大学では経験の場が少ない、チームによる開発を経験することができる。
  • 学習した知識や理論を、実際に活用する場ができる。
  • 企業での仕事の内容や、実務に必要な知識・スキルを理解することができる。
  • 学習した内容が、社会でどのように役立つかを実感することができる。
  • これからの学習に対する動機付けができる。
  • 進路選択や就職活動に役立つ。

参考までに、履修科目としての実施に関する“学生の生の声”を、以下に紹介する。

履修科目としての実施に賛成する意見

  • 大学の講義では、複数の人とチームを組んで物を作り上げるような授業はありませんが、チームで物を作り上げる時に必要なスキルは身につけるべきだと思います。
  • 大学では、企業との共同研究となる場合もあるかもしれませんが、基本的に「自分の研究課題を進める」ことが多いと思うので、どう周囲の人たちとチームを組んで進めていくのかということが学べて良いと思う。
  • (今の大学の授業では)習った知識を実践として生かす場があまりないため、ソフトウェア工学で学んだ知識を実際に使うという場が与えられることはいいことだと思うから。
  • 大学内の講義は受け身の講義が多いので、積極的に参加して、自らのスキルを上げるという意味で、大学のカリキュラムに加えて欲しい。
  • 授業や演習でやってきたことが実際の仕事の現場ではどのように役立つのかを知ることができる。同時に、これからの学習に対する目標の発見や動機付けにもなる。
  • 今学習していることが社会に出てどのように役に立つのかを、直感的に理解できると思うから。
  • 普通に講義を受けていただけでは、このような社会に出てから必要なスキルについて教わることは出来ないので、本当にためになった。これからも、学生に対して、このような授業を続けていってほしいと思う。
  • 大学の履修科目としてあるのは、すばらしいと思う。その授業を受けるか受けないかを選ぶのは個人の自由だが、SEになるために必要な知識やスキルなどについて詳しく知ることができるので、大学でこういったカリキュラムを組んでくれるのはすごくありがたいと思う。
  • 卒業後に進学するにしても就職するにしても、履修しておいた方が進路決定の参考になる。
  • 私たち学生は、実務的な知識や技術に対してのイメージが曖昧なまま、就職に向けて進みがちですが、少しでも現場での仕事の内容が垣間見えるようなこの教育訓練で、仕事に対するイメージも明確になるのではないかと思います。
  • 就職活動の際に、この講義の内容をウリにすることができるから。
  • 今まで大学で勉強したこととは違う次元の学習内容であり、社会に出てから非常に役立つと感じたからです。今回の教育訓練のような科目が大学で受講できれば、学生にとっては将来への大きな自信につながると思います。
  • 企業での仕事の一部を体験しながらいろいろ教えてもらえるという授業は、大学での講義とは一線を画すものであり、実際に、学生が一番望んでいる講義だと思うから。

なお、上図「今回実施された教育訓練を、自分の学部の履修科目として引き続き実施すべきか?」では、1割にも満たないが、履修科目としての実施に反対する学生から、アンケートでは、以下のような反対意見も聞かれた。

履修科目としての実施に反対する意見

  • 時間が足らない。学ぶ量に対して、授業時間が適切でない。
  • 難しすぎる。
  • すべての学生がIT関係に就職するわけではないので、選択科目にするべき。
  • 自分の研究内容とは、ほどんど関係がない。
  • 大学では、もっと理論的な内容をしっかり学んだ方がよい。
  • モチベーションが高い学生でなければ挫折すると思う。希望者だけを募った方がよい。
  • 私は、大学または大学院での授業が実践教育に偏っていってほしくないと考えている。卒業または修了までに、1~2つ、今回のような授業を履修すれば、自分が学習してきた知識がどう活かせるか、自分の技能は社会に通用するのか、などを体験することができ、履修後の知識・技能習得に良い影響を与えられるのではないかと思う。

適切な実施学年

下図は、“履修科目として実施する場合、何年生の科目として実施するのが適当か”を尋ねた設問の結果である。ここでは、専門課程が始まり、就職活動も行われる大学3年生が最も適しているとの回答が多いが、その後の学習に対する動機付けを重視し、大学2年生が最適とする回答もみられた。また、高専生の場合は、本科4年生との回答が最も多い結果となった。

C511-4-15

何年生の時に受講すべきだと思うか?

(H17・H18年度 受講後アンケートの結果から)
※ 上記アンケートは、H17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=438)

以下には、受講学年に関するアンケートでの受講者コメントを示す。

事業で実施された教育訓練を受講する学年についてのコメント

  • 私は現在IT業界で働いているが、この講座を受講していたおかげで、就職前から働くことに対する心構えができた。就職活動直前の大学3年生・大学院1年生に、特にこの講座を勧めたい。
  • 今回の難易度のままなら大学3年(もしくは4年)でも十分対応できると思うし、大学院に進まない人が受講することに、かなりの価値があると思う。(学部3年がよいとする意見)
  • 大学4年以降では、卒業論文や就職活動等が忙しく、逆に学年が若すぎると、知識がまだ貧しく、実習内容が制限されてしまうと思います。その両方のバランスをとると3年生がベストだと思います。
  • 大学3年の時が進路を控えていて一番本気になって勉強に取り組んでいるときだから。実際の自分がそうで担当の人の話もとてもおもしろかったですし、この学年がいいと思います。
  • 大学1、2年では、この授業を理解するのは難しいと思う。大学4年生になると就職活動や卒業論文などで逆に忙しくなり、授業を受ける時間がないと思う。そのため、大学3年のときに受けるのがよいと思う。授業を受けると、コミュニケーションや応用知識が身につくほか、就職活動でも役に立つと思う。
  • 研究で忙しい4年生、大学院生には相応しくないタスク量だと思う。この講義の課題をこなすために、非常に多くの講義外の時間を費やし、その間研究が進まなかった。学部3年生を対象にすべきだと思う。 (学部2・3年がよいとする意見)
  • 1年生では基礎的な知識、技術が不足していてあまり共同作業による創造的なカリキュラムが作りにくく、また、3・4年生では進路などについてある程度方向性を決定してしまっている人も多く、この講座を通して学んだことを十分に生かせる期間が不足する場合も多いのではないかと感じるので、その前後の期間を考慮すると2年生の後期が一番いいのではないかと思います。
  • 学部の三年生は、講義を受講する上での予備知識の面で適当であるが、後期になると就職活動や研究室配属が迫ってくるので、時間的に余裕が無い場合が多く、土曜を含む休日に講義があった場合に就職関係のイベントに出られない事があった。また、四年生は卒業研究があるので、研究室によっては講義を受ける余裕が全くない学生も多く出てくる。一方、一年生では内容的に難しく講義について来られない可能性があるが、二年生の後期ならばある程度講義の内容を理解できると思う。よって、学部二回生の後期か、三回生の前期が適当であると考える。
  • 数学などの基礎教育の終わった学部2~3年あたりの授業として設置した方が、それ以降の専門的な勉強を進めていくうえでの動機付けになってよいのではないかと思います。(学部4年がよいとする意見)
  • 今まで教えてもらったことの総まとめでもあるので、学部4年くらいが妥当であると思う。(大学院)
  • 就職前であり大学院生は即戦力と見られるので、大学院1年が妥当だと思います。
  • 学部の3年までは講義において、プログラミング等の実装技術について重点的に学習するべき。そして、4年次にて卒業研究を通して、設計→実装の流れを体験し、大学院にて実践的な要求分析→設計→実装→評価という流れを体験できればいいと思う。(高専生の意見)
  • 4年生に入って専門内容が増えている中で行ったほうがいいと思う。3年生だとまだ詳しく専門をやっていなくてできないと思うし、5年生は卒業研究で忙しいので4年生がちょうどいい。
  • たとえ2年生のときに受講したとしても、受講前に持っているスキル・知識に大差はなかった。また、今回の訓練で得られたもっとも貴重なものは「経験」であり、もっとずっと早い時期に受講して仕事への意識を高めておくことは学生にとって非常に有意義であると考える。

実践的なIT教育について

以上、産学協同実践的IT教育関連事業で実施された教育訓練に関する“学生の声”を紹介したが、以下のところでは、現行のカリキュラムや、実践的なIT教育一般に対する“学生の声”を紹介する。

現在のカリキュラムに対する満足度

平成17年度事業のフォローアップアンケート、平成18年度の受講後アンケートでは、学生が現在の教育機関のカリキュラム(履修内容)に対して、どの程度満足しているのかを尋ねた。その結果が、下図である。

C511-4-16

学部(学科・専攻課程)のカリキュラム(履修内容)に満足しているか?

(H17・H18年度 受講後アンケートの結果から)
※ 上記アンケートは、H17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)

上図では、約6割の学生が、「非常に満足している」「満足している」と回答しているが、約4割の学生は、「あまり満足していない」「全く満足していない」と答えている。
「あまり満足していない」「全く満足していない」と答えた学生のコメントの一部を、以下に紹介する。満足していない理由としては、履修できる範囲や科目の内容、自分の希望との合致など、様々な理由が挙げられたが、以下には、カリキュラムの内容に関する理由を主に示した。

「満足していない」「あまり満足していない」と答えた学生のコメント

  • 講義を聞いていて、どういうことに利用できるのか、実感が湧かないから。
  • 就職してから役に立ちそうなものや、面白い授業があまり見当たらない。
  • 今後どの程度役立つ内容であるかを考えると疑問がある。もう少し演習を増やしてもいい気がする。
  • 個人的な意見としては、もうちょっと演習(プログラミングやネットワーク関係)を多めにしてもらいたいと思います
  • 座学が多く、あまりスキルが身に付かない。
  • もっと新しい技術や知識に関する講座を開講すべきだと思う。実践的な講座を多く取り入れて欲しい。
  • 教科書(理論)的な情報関連科目が一通り揃っている点については良いと思うが、一方で実践的な内容(プログラミング、ソフトウェア開発)が少ない。
  • 技術のみが重視され、時代にそぐわない。コミュニケーション力を高める講座を、もっと増やすべき。

実践的なIT教育の導入に対するニーズ

下図は、“実践的なスキルを習得するための講座を、教育機関のカリキュラムに取り入れて欲しいか”を、学生に尋ねた設問の結果である。この図によれば、9割近い学生が「そう思う」と答えており、実践的なスキルを習得できる講座に対する一般的な学生のニーズは、きわめて高いことが読み取れる。

C511-4-17

実践的スキルの育成を重視した講座を、積極的に大学等の教育に取り入れて欲しいと思うか?

(経済産業省「平成17年度 産学協同実践的IT教育基盤強化事業 事業報告書」)
※ 上記アンケートは、H17年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対する 受講後アンケートの結果。(N=201)

過去に実施された学生向けアンケートでは、実践的な教育の実施に関して、学生から、多数の意見が寄せられた。以下では、そのうち、いくつかの意見を紹介する。

大学等での実践的な教育の実施に関して

  • 既存の履修科目は、工学部にしてはあまりにサイエンス寄りであったように思える。もちろんそちらも重要だが、実際の場面を知ることも重要であると考える。
  • 大学教育の中で、理論的なこと、学術的なことを学ぶことは重要だが、実務に則した内容があることも重要であると思うから。
  • 大学には、まだ実践的な講義が少ない。実践的な講義はよく身につく上に、学生のモチベーションも上がる。
  • 実際の第一線で使える技術を学べてこその大学であると考える。
  • 学校の講義は概念的・総論的な内容が多く、実践性に欠ける。卒業後、就職先で1から開発手法を学ばなければならないので就学中にそのような講義を受けられるとありがたい。
  • IT業界への関心が高まっている現在、基本的な「IT知識」と「技術」について学ぶ場を、大学できちんと設けるべきだと感じている。しかし、私が所属する学部では、ネットワーク等の「知識」を学ぶ事ができる講義は設けられているが、「技術」を身につけるための場がほとんど設けられていないのが現状となっている。私は、昨年の教育訓練を受けて、「IT技術」は「知識」だけ学ぼうとしても、分かりづらい部分があり、実際に演習を行って、「技術」と平行して学ばなければ、自分の力として身につけることはできないと感じた。そのため、今後ともこのような教育訓練を続け、学生にITの「知識」と「技術」の両方を身につける機会を与えるべきだと思う。

平成17年度事業のフォローアップアンケート、平成18年度事業の受講後アンケートでは、“情報工学系のカリキュラムに必要だと思う学習内容”を、以下の5つの選択肢から選んでもらったが、その結果、企業実務を意識した内容が、専攻研究に関する内容よりも、高い支持を集めている。

C511-4-18

情報工学系カリキュラムに必要だと思う学習内容(複数回答)

 

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 上記アンケートはH17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)

また、下図は、自分のカリキュラムにおける「実践的な講座」(演習)と「知識習得のための講座」(座学)の割合について、現状と理想(希望)を尋ねた結果である。ここでは、現状では、カリキュラム上における実践:知識習得の割合が、3:7もしくは2:8になっているのに対して、希望としては、5:5や4:8の割合まで、実践的な講座を増やしてほしいと考えている学生が多いことが分かる。実践:知識習得=7:3、もしくは6:4と、かなり実践寄りのカリキュラムを希望する学生も、約4分の1に上っている。

C511-4-19

実践的な講座と知識習得のための講座の割合(理想と現状)

 

(経済産業省「平成17年度 産学協同実践的IT教育基盤強化事業 事業報告書」)
※ 上記アンケートは、H17年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対する 受講後アンケートの結果。(N=201)

 

産業界講師に教わりたいこと

平成16年度事業の受講後アンケートでは、実践的なスキルを習得する講座で、産業界の講師に最も教わりたいことを、学生に自由回答形式で尋ねた。その結果、学生が産業界講師に教わりたいことは「実務」「具体的技術」「経験等」「業界」の4つに大別された。
以下、実践的な講座で教わりたいことについての学生の意見を紹介する。

① 実務について

  • プロジェクトの実際について。また、学んでいることがどのような場面で役立つか。
  • 勉強と仕事の、意味の違いを一番知りたいと思った。実際のシステム開発を通して、自分が学んできたことが社会でどういう意味を持つのかを知りたい。
  • 実際に今企業で必要とされている知識、技術について教わりたい。
  • 実践的なスキルが何を指すのかによるが、その講師が職場で用いるスキルと同様あるいは、同様のスキルが無理であれば平易にしたものを学べればうれしい。
  • 業界が大卒の新人に求めているスキルはどのようなものなのか。学生のうちに学んでおくと以後役立つと思われる内容を中心に据えて欲しい。
  • 新入社員に求めるもの。
  • プロフェッショナルとしての人のありかた。
  • 現場の雰囲気。講師と生徒、ではなく、先輩と新人等の関係ではどのような仕事の運びになっていくのか、など。

② 具体的技術について

  • UMLなどを用いた分析・モデリングなどの設計に関するスキルを身につけたい。
  • アマゾンや楽天などの、ネットショップのシステムの構築の仕方。
  • 実際のプロジェクトのやり方とテスト手法。
  • グループ内でのリーダーシップ、コミュニケーション手法(ユーザとの折衝、要件定義の進め方)。

③ 経験等について

  • 実際の仕事の流れや、トラブルに見舞われたときに、どう対処したか、また、学生ではコミットできないような大きいプロジェクトに関わる人の意見など。
  • 今までに味わった生の経験や、そこから生まれてきた経験則(既知の情報にとらわれない)を伺いたい。

④ 業界について

  • 産業界の現状・問題について教えて欲しい。
  • 企業の最前線ではどのようなことに関心が向いているのか、どのような技術が使われているのかが知りたい。
  • 業界の展望。将来を見通して何を目指せばよいか。

情報サービス・ソフトウェア産業について

事業に関連して実施されたヒアリング・アンケートでは、情報サービス・ソフトウェア産業に対する学生の就業希望や、その産業における仕事のイメージなども尋ねた。ここでは、その結果を示す。

就業希望

次図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する就業希望」は、情報サービス・ソフトウェア産業に対する学生の就業希望の程度を尋ねた設問の結果である。これによれば、“あなたは、卒業後、情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に就きたいと思いますか?”という問いに、「ぜひとも就きたい」「できれば就きたい」と回答した学生は、半数以上に上っている。下図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に就きたい理由」では、「自分の専攻を生かせるから」との理由が最も多い結果となっており、「仕事の内容が好きだから」「技術を身に付けることができるから」という理由が、これに続いている。
次図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する就業希望」において、情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に「どちらかと言えば就きたくない」「絶対に就きたくない」と答えた学生は、全体の1割未満に過ぎない。昨今、情報サービス・ソフトウェア産業に対する学生の就職人気の低下が問題視されているが、教育訓練を受講した学生の多くは、情報サービス・ソフトウェア関連の仕事を、少なくとも、就業先の選択肢の一つとして視野に入れていることが把握された。
なお、事業における教育訓練の実施形態は様々であり、必修科目として実施された教育訓練もあれば、単位認定の行われない特別講座として実施された教育訓練もあった。しかし、特別講座のような教育訓練においても、積極的に講座に参加する学生が多かったため、事業全体として見れば、受講者には、平均的な学生より、意欲的・積極的な学生が多い傾向が見られる。そのため、アンケートの母集団は、平均的な学生の回答とは、若干異なる可能性も考えられる点に留意が必要である。

情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する就業希望

 

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 上記アンケートはH17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)

C511-4-21

情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に就きたい理由(複数回答)

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 上図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する就業希望」の問いに、「ぜひとも就きたい」「できれば就きたい」「選択肢の一つとして考えている」と回答した学生を対象(N=342)

下図には、上図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する就業希望」の設問に、「どちらかと言えば就きたくない」「絶対に就きたくない」と答えた学生の理由を示した。「自分の能力面での適性がないと思うから」を理由として挙げる学生が最も多く、「仕事の内容があまり魅力的ではないから」がそれに続く結果となっている。また、対象者の3分の1程度が、「労働環境が良くないと思うから」を理由に挙げている。

C511-4-22

情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に就きたくない理由(複数回答)

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 上図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する就業希望」の問いに、「どちらかと言えば就きたくない」「絶対に就きたくない」と回答した学生を対象(N=33)

希望する仕事

下図は、情報サービス・ソフトウェアに関わる仕事のうち、興味を持っている仕事を選択する設問の結果である。「新しいシステムやソフトウェアを企画する仕事」という回答が最も多く、それに「システムやソフトウェアの技術的な設計を行う仕事」が続いている。

C511-4-23

情報サービス・ソフトウェア産業の仕事のうち興味を持っている仕事(複数回答)

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 上記アンケートはH17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)

上図からは、情報工学系の学生は、研究・開発や、プロジェクトマネジメント、ベンチャー起業などより、システムやソフトウェアの企画・設計に関する仕事に高い関心を示していることが分かる。

また、以下には、“学生の生の声”として、自由記入欄に寄せられた、学生の希望する仕事内容を紹介する。自由記入欄には、様々な回答が寄せられた。

情報サービス・ソフトウェアに関してやりたい仕事

  • プログラムをバリバリ書く仕事をしたいです。
  • プロジェクトマネージャーよりも、プログラマーなど、実際に手を動かしてシステムを作る仕事に興味がある。
  • 具体的に何がしたいというのはまだ決まってはいませんが、どの分野に進むにしても、その分野に関するスキルに長けたスペシャリストになりたいと思います。
  • 主に組み込みなど、低いレイヤから高いレイヤまでの知識技術が要求される仕事を行いたい。
  • 自然言語処理を使用した会話の出来るぬいぐるみや計算機を作りたい。
  • 社会の基盤となる基幹的なシステムを構築したい。
  • 業務分析から開発まで、一貫してプロジェクトに関わりたい。パッケージはあまり使わずフルスクラッチで開発したい。モデルの美しさを重視したい。
  • 独創的で、かつ役にたつソフトウェアを生み出したい。
  • 人々の役に立つようなものを作っていきたい。また、気が付いたら、それがあるのが当たり前のような、身近なものを作っていきたい。
  • 世界で活用される画期的なソフトウェアの開発をしてみたい。
  • 専門家ではない一般ユーザーにとって使いやすい、楽しいWebサービスをそのデザイン・内容をプロデュースできる仕事。自分の作り上げた世界で多くの人を喜ばせることができる仕事。
  • 人々のコミュニケーションを促進させるような、画期的なWebアプリケーション、もしくはコミュニティサイトのようなものを作りたい。
  • 企業の研究職に就き,大きな利益を生むソフトウェアを開発したい。また、ある程度のスキルを得たら、経営や起業も行ってみたい。
  • 起業・創業を目指したい。自分が参加したプロジェクトの生産物や自分の組んだプログラムを広く世界に普及させたい。
  • 現状の日本のソフトウェア輸出量を増加させるようなものを作りたい。
  • 「○○と言えばコレ!」と言われるくらい有名で便利なソフトウェアを開発したい。
  • 自分の作った技術が、街中にあふれているような、技術を作れる技術者。
  • プロジェクトマネージャーとして責任ある仕事を任される技術者になりたい。
  • システム開発をリーダーの立場でマネジメントしたい。
  • 現在直面している問題にどのようなシステムを導入したら解決されるかを顧客に提案したい。
  • 情報技術に詳しくない方と情報技術の専門家との橋渡しを行う仕事。
  • 情報関連技術を利用した新しいビジネスを考えたい。
  • システムの構築を通して、異業種・他分野の産業や社会について学びたい。

仕事や産業に対するイメージ

事業に関連して実施されたアンケートでは、情報サービス・ソフトウェア産業における仕事や産業そのものに対するイメージについても、学生に尋ねた。
下図は、下記の選択肢の中から、情報サービス・ソフトウェア産業に当てはまると思う選択肢を選ぶ設問の結果である。グラフ中の数値(%)は、その選択肢を選んだ回答者の割合を示している。

C511-4-24
情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する学生のイメージ

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 上記アンケートはH17・H18年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)
※ 設問は、日本の情報サービス・ソフトウェア産業に当てはまる選択肢を、複数回答(回答数制限無)で選択するもの。

上図の設問の選択肢は、すべて肯定的な表現に統一されているが、回答が半数を超えた選択肢は一つも無く、上記の項目に関しては、肯定的なイメージがそれほど強くないという傾向が読み取れる。
項目間の相対的な差に着目すると、最も回答率が高かった選択肢は「個人の実力が評価される」となっている。それに、「創造性が求められる」「やりがいがある」「若いうちから活躍できる」「最先端の技術に携わることができる」などが続く。
一方、回答率が最も低かったのは、「一生続けられる」という項目であり、この項目が当てはまると答えた回答者は、わずか4.3%に過ぎない。学生の間に、この産業の仕事は、転職や離職が多いというイメージが定着している状況がうかがえる。さらに、「国際的に活躍できる」「高い報酬が得られる」「夢がある」「仕事の自由度が高い」などの項目も、選択率が低くなっており、これらについても、学生は、それほど肯定的には評価していない。

下図は、仕事ではなく、産業に対する学生のイメージを尋ねた設問の結果である。回答の形式は、上図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する学生のイメージ」と同様であり、当てはまると思う項目を選択する形式とした。
ここでも、肯定的なイメージが、全体的にそれほど強くはない傾向が見て取れる。最も回答率の高い選択肢は、「今後ますます成長する」であるが、これでも、回答率は4割に留まっている。また、「日本と米国では、日本の方が優れている」「国際的な競争力がある」などの選択肢については、回答率が比較的低い結果となっており、学生が、日本の情報サービス・ソフトウェア産業の国際的な競争力について、あまり肯定的には評価していないことが読み取れる。


C511-4-25
情報サービス・ソフトウェア産業に対する学生のイメージ

(H17・H18年度事業の教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 本設問に関する注記は、図「情報サービス・ソフトウェア関連の仕事に対する学生のイメージ」に同じ。

以下には、情報サービス・ソフトウェア産業に関して、これまで実施したアンケートで、自由記入欄に寄せられた、“学生の生の声”を紹介する。

肯定的なイメージ
社会貢献度
  • 現代の社会を支える重要な業界。
  • 最先端の技術を研究している業界であり、社会的な貢献度が高い。
  • これから社会のシステムが変わっていく、その中心にある業界だと思います。
  • 社会的な貢献度が高い。この国で一番栄えていると思われる業界。
  • 情報系だけでなくその他の業界や分野にも貢献することができる。
  • やはり社会的貢献度は群を抜いていると思う。まだまだこれからだと思っているのでやりがいのある仕事だと思う。
やりがい
  • 一言でいえば、厳しいけれどやりがいがあるというイメージがあります。
  • 仕事がきつそうだけど、仕事を通じて自分を成長させる機会が多そう。
  • いろいろな業界の業務知識を得ることができる。
  • 他の全ての業界とのつながりがあり、やりがいのある業界だと思っています。
  • 社会的な貢献度が高く、常に向上心が必要である。
  • 今非常に注目されていて、最先端の技術を持っている。
  • 時代の先端を行く業界である。
今後の成長可能性
  • 今頭打ちしている部分をソフトウェアによってさらに延ばせる可能性をもっているから。
  • 既存のさまざまなサービスに付加することでまだまだ成長しそう。
  • やりがいがあり、今後需要があり衰退することはないと考えられる分野。
  • 近年急激に成長してきたので、今後も大きな発展が望めそう。
  • もう成長しきっている感がありますが、まだ成長する可能性がある。
  • 常にイノベーションが求められる。今後、社会にとって必須の技術。
  • 将来、もっとも不可欠なものとなる業界。
組込み関連
  • まだ活躍する部分は大きいと思う。携帯電話などモバイルや、電化製品などの組み込みなどたくさんある。今旬である!
  • 一番発展が目覚しいのは携帯電話であるが、携帯電話のような爆発的な普及を実現できるような分野を取り扱っている企業は、日本を支えていると思うし尊敬している。

 

否定的なイメージ
待遇
  • 激務薄給
  • サービス残業が多い。つまり働いているわりに給料が少ない。
  • 大変な仕事だが、報酬が割に合わない。
  • 待遇に激しい差があり、労働時間は他と比べると酷い。
  • 仕事を創出する企業から、一次下請け会社、二次下請け会社、三次下請け会社と、だんだん労働環境が劣悪になっている。
  • 悪い印象しかない。長時間労働の割に給料が追い付いてないイメージしかない。もっと労働にふさわしい対価を出してもいいと思う。
  • 情報システムの重要性と報酬が見合ってない。安く長時間働かされる。
仕事内容
  • パソコンとひたすらむきあっているイメージがある。
  • ずっとパソコンに向かっていそうで、基本的に活動内容が暗い。
  • 会社や人のためになるとは思うが、単調な仕事というイメージ。
  • ストレスが溜まりやすく、精神的に大変そうである。
  • 眼精疲労が激しそう。どちらかというと裏方、縁の下の力持ちというイメージがある。
  • エンジニアに関する文章を読むと、神経がすり減らされるといった否定的なものが多い。新しい技術や知識を学ぶ時間もなく、厳しい仕事であるというイメージがある。
職場環境
  • 職場に協調性のある人間が少なそう。
  • 体力勝負の面が大きく、労働条件が悪い。
  • 徹夜は折込済。
  • 業界として幅広いので、色んなチャンスがありそうだが残業が多く、肉体的、精神的にきつそう。
  • やりがいがありそうだが、3Kというイメージがある。
  • アルバイトでシステム開発の補助をしていますが、3K(きつい・帰れない・結婚できない)は事実だと感じています。
  • あまり悪いイメージは聞かないが、SEなどは残業があまりにもひどいとの話は良く聞かれる。
  • ソフトウェア業界は労働時間・仕事内容共に、とにかくハードというイメージがある。
  • 職種によっては過労死しそう。
  • 成長分野なだけに人材が不足している。例えば、業界にふさわしいマネジメント能力を持った人があまりいない。
  • あまりにも急成長しすぎしたせいか、福利厚生が他の業界に比べて悪すぎる。びっくりするが、就職説明会で売りとして「うちはサービス残業がありません」というレベルである(あったら法律違反なのに。。。)残業がやたらに多いのも問題かと思う。本当に肉体労働なら問題はないが、デスクワークなのに肉体労働と揶揄されるレベルである。悪い意味で理系らしい(視野が狭い)人が多いせいもあるかも知れない。このままでは、優秀な人は逃げていく業界になると思います。それでも昔から希望していた業界なので進む予定ですが。。。
  • IT業界に対しては、仕事が忙しい(ただし波がある)、残業が多い、などのマイナスイメージはあるが、仕事なので仕方がないと思っている。
  • ストレスが多い、休みが少ない、などと聞くことはあるが、やりたい仕事なので、頑張りたいと思う。
キャリア
  • 若いうちしか働けない。
  • 実力というよりも忍耐と精神力・体力が持つかどうかであり、若いうちに退職する人が多いように見える。
  • きつい仕事だと思う。現場で実際にプログラムを組んでみたりするのは若いうちしかできない仕事だと思う。
  • 体力のある若い時期しかできない仕事。その後の見通しが立たないところが怖い。
  • 技術はあるが人材は使い捨てであるという感じが非常に強い。
  • 常に勉強していないと取り残される。
  • 実力主義のように思える。
  • 移り変わりが激しく、実力のないものは消えていくイメージがあります。
社会からの評価
  • ハード面より軽視されがちだが、問題が発生すると責任を負わされる末端。
  • 製造業と違って、手にとって目に見える成果が出てこない仕事が多く、評価され難い。
  • 産業・社会生活を支える基盤であり、時代の先端を行く業界であるが、その分仕事がきつく、ミスが許されない。
  • 社会的にも大きなシステムを構築することにより、社会に貢献するとともにそのバグにより社会を危険にすることもありそうなイメージ。

 

その他
その他
  • 仕事の具体的な内容が理解されていないと思う。ライブドアなど、多種多様な仕事がある業界だと思う。
  • 構造がゼネコンに似ている(下請けへの丸投げなど)。その一方で全体としてレベルの高い仕事をする方法論に欠けている印象を受ける(例えば、航空管制システムや東証のシステムですら止まる)。
  • 新しいアイディアを活かせる土壌ではなく、アメリカの後追いばかりの印象です。また、収益率が悪く、効率的ではない大きいだけの企業が目立ちます。残業が多くプライベートを楽しむという点においては、絶望的な業界だと思います。
  • 業界・市場としての将来性はあるものの、いかんせん待遇や労働条件が劣悪。現状が打破されないと今後優秀な人材が他分野へ流出し、成長に支障をきたすことが懸念される。結果として国際的な競争に取り残される危険性も十分にある。関心はかなりあるものの、就職に関しては慎重にならざるを得ない。
  • 革新的な仕事が出来そうな反面、労働時間等が過酷で、離職者も多いイメージがある。企業によって違いはあると思うが、全体的に社員にやさしくない環境で、半ば使い捨てられるような感じもする。ただ、オフィス環境など働きやすい環境作りに積極的に取り組んでいる企業には好感が持てる。
  • IT系企業でのシステム開発が苛烈すぎるという印象がある。経済産業省の「情報サービス・ソフトウェア産業維新」の報告書では、競争力のある優秀な人材の育成も挙げられている。しかし、私の友人の一人は、非常に高い創造力と技術力を持っているにも関わらず、企業でのシステム開発の苛烈さからIT系企業には行かないと言っている。同報告書では、業務形態の変革についても述べられているため、まずはこの部分を早急に改善していただきたい。
  • 日本はアジア圏の競争や企業同士の新商品の出し合いによって、開発の納期が異常なまでに短くなり多くの人材を潰していると私は良く聞きます。確かに現実的にインパクトを与えるためにも早く作らなくてはならないのは分かりますが、このようなことがこれ以上おこることの無いように開発論や手法、人材の使い方の確立をしていただきたいと思います。
  • 組み込みには強いが、それ以外の部分では大きく負けていると思う。海外に取られないためにも、日本だけの強みを強調していくべきである。
  • 自分は、組込み系のソフトウェア産業が今後ますます発展し成長する事を期待しています。情報技術のデファクトスタンダードはほとんどが米国の大企業に取られており、インドのIT産業の成長も凄まじい物があります。そういった状況の中、ソフトウェアの技術者として日本の製造業に貢献するには、組込みソフトウェアに関わるのが一番であると自分は考えています。
  • アメリカやインド、韓国と比べると、劣っているか、いずれ追い越される印象。
  • 今後発展していきそうな業界とはいえ、インドや韓国などの成長への対抗策も考えていくべきだと思う。
  • 労働環境の劣悪さなど、悪いイメージが先行しているように感じる。日本が世界と十分に勝負しうる分野になりえると思うので、今後様々な問題を解決しつつ、日本の産業をリードするような革新的な企業が今後出て来ることを期待する。
  • 社会的需要はあるものの、その価値と待遇の整合性が十分にとれていない印象がある。一部では過大評価され、一部では過小評価され、正当な評価を受けることが少ないように思う。現状ではそれが情報産業に従事する人々の不利益になっており、多くの課題があるように感じる。

なお、就業経験を持たない学生が、仕事や産業について抱いているイメージは、何らかの情報源に基づいて形成されていると考えられる。その情報源を把握するために、事業の一環として実施したアンケートでは、学生に仕事や産業についてのイメージを尋ねるとともに、そういった情報の入手先についても尋ねたところ、以下のような結果となった。この結果からは、学校の先輩や友人、Webサイト、学校の先生などが、学生にとって重要な情報源となっていることが分かる。


C511-4-26
【参考】情報サービス・ソフトウェア産業に関する情報の収集方法(複数回答)

(経済産業省「平成17年度 産学協同実践的IT教育基盤強化事業 事業報告書」)
※ 上記アンケートは、H17年度事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対する 受講後アンケートの結果。(N=201)

以上、「学生の声」では、事業において教育訓練を受講した学生の声を紹介した。

産学協同実践的IT教育関連事業では、それぞれの個別事業において、様々な教育訓練が実施されたため、実施先の教育機関や受講した講座等によって、学生の回答には若干の差があるが、ここでは、全個別事業の受講者を全体として捉え、その全体的な傾向を示した。
全体としては、事業で実施されたような実践的なIT教育が、学生に高い支持を得る傾向にあり、学生の側も、その継続・拡充を望んでいると言える。
また、学生に実践的なスキルを習得させると同時に、仕事や産業の実態について、産業界から、現状に即した情報を伝えることも重要であり、これは、学生の側から望まれていることでもある。実践的なIT教育の普及・促進とともに、産業界から学生に対する情報発信も、今後の一つの課題として挙げられると言える。

 

北海道大学卒業生グループインタビュー

産学協同実践的IT教育関連事業では、実施された教育訓練の有効性を確認するために、教育訓練を受講して卒業した後、IT関連企業に就業した卒業生に対して、グループインタビューを実施した。
以下では、その結果から、産学連携教育の有効性や課題を示す。

概要

グループインタビューは、平成16年度に、北海道大学大学院にて実施された「高度IT人材のための産学協同教育フレームワーク開発」事業の受講生を対象として行った。
「高度IT人材のための産学協同教育フレームワーク開発」事業自身は、事業期間中、下図の「オープンシステム工学特論・演習」部分のみを対象として実施されたものであるが、同校で実施されている産学連携講座は、この他にも「実ソフトウェア開発工学特論・演習」、「集中研修」及び「インターンシップ」までを含む、一連の長期講座として実施された。今回のグループインタビューでは、インタビューの対象範囲を、これらの産学連携講座全体とし、現役IT技術者として就業している受講者に、そこで学んだことが、実際にどのように役立っているかなどを尋ねた。

 

C511-4-27
北海道大学 産学連携講座全体像

 

インタビュー対象者は、大学院修士課程1~2年を通じて産学連携講座を受講し、現在では、そこで習得した技術を生かして、IT関連職に従事している。各対象者のプロフィールは、以下のとおりである。

インタビュー対象者のプロフィール
対象者 現在の所属企業(部門) 現在の主な担当業務
A 総合ITメーカー(アプリケーションシステム開発部門) プログラミング開発
B 大手SI企業  (研究開発部門) 開発現場に対する技術支援
C シンクタンク  (システム開発部門) 方式設計

 

インタビュー結果

本インタビューでは、主に、「①産学連携講座の良い点・悪い点」「②インターンシップについて」「③改善した方が良い部分」「④社会に出てからの有効性」「⑤就業前後のIT業界のイメージ」「⑥就業にあたっての処遇」「⑦自分の経験の社会への還元」の7点に関し、対象者の意見を収集した。

産学連携講座の良い点・悪い点

まずは、産学連携講座全体について、良かった点、逆にマイナスだったと感じる点を尋ねた。インタビュー対象者からは、学生時代より、産業界から直接教育訓練を受けることで、入社後に必要とされるスキルを十分獲得しているとの意見が聞かれた。しかし、広範囲にわたる実践的な技術・スキルを習得することができた反面、研究活動で専門性を磨いた学生と比較した際の、自分自身の専門性という点に関して、やや不安を感じているとの声が上がった。この他、やはり研究活動を通じて得られるような、知識を体系化するスキルなどについても、やや不安感を持っているとの声も聞かれた。
なお、産学連携講座の目的(既存講座との違い)は十分に明確化され、学生の理解を得ているようであった。

産学連携講座の良い点

  • 大学にいながら、社会に近いこと、新しいことを学ぶことができた。そういうことに触れるチャンスが多い講座であったと思う。
  • 就職して役立つ知識が学べたと感じる。
  • ITをやるなら広い視野を持つことが必要であり、講座ではこの点をよく見せてもらえた。非常に広いテーマに対応していた。
  • 幅広い技術を習得したことで、企業に入ってからも、様々な技術の話についていける。
  • 産業界でとびきり優秀な技術者に、先生として会うことができた。就職してから、それがいかに貴重なことだったのかが分かり驚いた。

産学連携講座の悪い点

  • 他の講座(研究室)と比べると、研究に専念していない気がする。自分にコアがない。(先輩社員に負けないくらいの)広い知識は持っているが、人から「大学で何を専門として研究してきたのか?」と聞かれた時に紹介できるものがない。例えば、就職活動の際に、他の学生は自分の研究内容について話をしていたが、自分はできなかった。
  • この講座でスペシャリティが与えられているかはわからない。

インターンシップについて

北海道大学大学院の産学連携講座では、海外企業を含むインターンシップが実施され、今回のインタビュー対象者は、すべてインターンシップに参加している。このインターンシップは、北海道大学大学院で実施された産学連携講座の大きな特徴でもあったため、今回は、これらのインターンシップの感想も尋ねた。
インタビュー対象者からは、インターンシップにおいて、責任のある仕事を任されることで、自分の意識が大きく変わり、仕事に対するモチベーションや自信・責任感が醸成されたとの声が聞かれた。参加期間や参加プロジェクトにおける学生の役割等を改善することで、さらに効果的なインターンシップになる可能性があるとの指摘もあった。
総体的に、インターンシップへの参加は、普段得られない貴重な経験として、高く評価されている。

インターンシップについて

  • インターンシップは非常に良かった。自分の考え方が変わったほか、勉強に対してのやる気も沸き、さらに自身もついた。
  • インターンシップで国内外の企業に行ったことで、自分が(社会に出て)何をやらなければいけないかを、実感として理解することができた。
  • インターンシップは有益であるが、どうしても企業にとって、切り出しやすい仕事を任されることが多い。また、慣れるまでの期間を考えると、2ヶ月程度のインターンシップの場合、仕事をしたのは実質1ヶ月程度だったように感じてしまう。

改善した方が良い部分

続いて、産学連携講座を振り返ってみて、改善した方が良いと感じる部分を尋ねた。
その結果、開発の基礎となるコーディングに関する教育を強化した方がよいとの意見が出された。加えて、この講座は、学生にとっては、かなり負荷の高い講座であるため、学生に対するサポート体制の充実が必要であるとの指摘も出された。また、このような実践的なスキルを育成する教育訓練は、現在大学院のみで実施されているが、学部時代の研究を志向した教育とは一線を画するものであるため、学部時代に学んだことと、産学連携講座で学ぶことに整合性を持たせることで、さらに産学連携講座が効果的になるのではないかとの意見も寄せられた。

改善した方が良い部分

  • フレームワークや手法は、十分に修得できるが、コーディング等開発部分についても強化をした方が良い。
  • 学生のうちに失敗を経験させることも講座の狙いにあるということだったが、そのせいか、学生側へのプレッシャーがある。精神的に追い込まれている人も出た。もう少し、精神的なサポートもあった方がよいと感じた。
  • 産学連携講座は、大学院のみで実施されていたが、講座で学ぶ内容は、学部時代の研究を志向した教育とは一線を画するものであるため、学部時代に学んだことと、産学連携講座で学ぶことに整合性を持たせることで、さらに効果的な教育になるのではないか。

社会に出てからの有効性

次に、大学院時代に産学連携講座で学習した内容が、企業に入ってから実際に役立っているかどうかを尋ねた。
結果としては、やはり、学んだ技術は直接役立っているとの回答が得られた。また、直接的に役立つ以上に、技術的な話題について先輩社員以上に容易に理解できる、知らない技術に対しても応用が利くなど、広い技術を知っていることから生まれる効果が非常に大きいことが把握された。

社会に出てからの有効性

  • JAVAやJ2EEを扱う部署であり、産学連携講座で学んできたことは直接役に立っている。
  • 同期や先輩社員が知らない言葉でもほとんど分かる。詳しい内容まで知らなくても、聞いたことはあることが多いので、まったく分からないということはない。既存の知識を足がかりに、応用を利かせることができる。産学連携講座で学んだことは、あらゆる場面で役に立っていると思う。学生当時はあまり実感がなかったが、就職して、学んだ内容の意味に気づく機会が多い。

同期社員との比較

  • 同期の中でも、プログラムだけをみると「ものすごい人」はいる。自分はその域に達していないが、逆に、いろいろなところで働くことができると思う。
  • 自身は、同期よりも一歩先を行っていると思う。会議等で技術的な話題が議論されているときでも、一度産学連携講座で経験しているので、勘所がつかめる。
  • 同じ部署に配属になった同期は5名いるが、同期よりも、自分の方が多くのことを知っている。
  • 先んじて実践的な知識やスキルを学んだことは、その後のスキル修得や実務能力の向上にプラスになっている。また、その差は、自分自身学び続けることで、一年たった今も縮まっていない。

就業前後のIT業界のイメージ

産学連携講座の受講者は、仕事の内容についての理解度が高まるため、就業前後でのミスマッチも少なくなると考えられる。この点を確認するために、今回のインタビュー対象者には、就業前後でIT業界に対するイメージが変わったかどうかも尋ねた。
その結果、学生時代に、実践的な知識やスキルを学び、また実務に触れることで、就業前後でのミスマッチ感覚は少なかったとの回答が得られた。

就業前後のIT業界のイメージ

  • 実務の内容は、想像していたよりもかなりドロくさいとは思うが、学生の時にある程度分かっていたので、大きな違和感はない。何かあると人手をかり出して突貫工事をやったりしている。産学連携講座の先生からの情報が大きい。
  • 思ったほど3K的な職場ではなかった。こうしたイメージは部署やフェーズによると思う。
  • 企業によって文化の違いがあることも分かった。

就業にあたっての処遇

産業界では、学生の専攻を重視しない採用を問題視し、実践的なITスキルを持つ学生に対しては、入社時より、他の新卒社員より高い処遇を与えるべきであるとする意見も聞かれる。
この点に関しても、インタビュー対象者の意見を聞いたところ、学生は、就職や企業の選択にあたって、単に高い処遇を求めているわけでなく、自分の能力をしっかり評価してもらうことが重要であると考えているとの声が聞かれた。企業の評価能力とそれに対する適切な処遇が問われるところであろう。

就業にあたっての処遇

  • 就職時、特にこうした産学連携講座を受講したことで処遇は変わらなくとも良いと考えている。処遇の差は、仕事で示せばよい。
  • きめ細やかな入社試験をして、自分が持つスキルをしっかり評価してもらい、結果として高い初任給で採用されれば、それは魅力的だが、今の就職試験では、そのような評価はほとんど行われていないのでははないか。

自分の経験の社会への還元

今回のインタビューでは、インタビュー対象者全員が、自分達が産学連携講座を通じて獲得したスキルに自信を持ち、さらに、これを高めた上で、後輩等へフィードバックしていきたいとの意志を示していた。これは、北海道大学大学院において産学連携講座を実施した産業界講師陣を支える願いであったとも言えるが、受講生は、その願いを十分に理解し、受け止めていると見られる。

自分の経験の社会への還元

  • 自分もいつかは産学連携講座での講師等を務めてみたいと思うが、まだ若すぎるような気がする。もう少し会社で経験を積みたい
  • 講師等に挑戦したいという気持ちはある。会社の2年目の研修では3年目の社員が講師になるので、まずはここで経験を積みたい。
  • 大学院の産学連携講座で得た貴重な経験を、いつか社会に還元したいと思っている。しかし、今の自分にできることは、教えられたものを生かして企業の中で活躍し、認められて出世することであると考えている。

以上、多数の企業が参画し、本格的な産学連携教育として、世間的にも注目を集めた、北海道大学大学院における産学連携講座の成果を、学生の声を通じて紹介した。
産業界講師によって教授された実践的な技術は、卒業生が技術者としてのキャリアを築く上での基盤となっている。また、企業人としても普段接する機会の少ない、業界第一線の産業界講師に教えられたという経験は、受講生にとっては、今回の産学連携講座ならではの貴重な経験であり、今後キャリアを築く上でも大きな意味を持つものであると言える。


「学」側関係者の声

産学協同実践的IT教育関連事業では、学生に加えて、教育機関(「学」)側関係者(講座担当教員、産学連携担当職員等)に対しても、ヒアリング調査を行った。ここでは、これらの調査から得られた「学」側関係者の声を紹介する。

実践的なIT教育の学生に対する効果

実践的なIT教育に対する効果は、学生に対しても尋ねているが、「学」側関係者には、教員の視点から見た、学生への効果を尋ねた。まずは、それらを整理した結果を示す。

【教員から見た実践的なIT教育の学生に対する効果】

  • 興味が持てる/将来役立つ内容であるため、学生が意欲的に演習に取り組んでいた。
  • 大学では経験の場が少ない、チームによる開発を経験させることができた。
  • コーディング以外にソフトウェア開発に必要な工程を学ばせることができた。
  • 産業界講師によって、学生の緊張感を高めることができた。
  • これからの学習に対する学生の動機付けができた。
  • 学生が進路選択や就職活動を行う際に役立った。

上記の内容の多くは、学生から聞かれた意見と一致している。学生・教員双方が、今回の事業で実施された実践的なIT教育に対して、同様の印象を持っていると見られる。

実践的なIT教育の学生に対する効果についての教育機関側関係者のコメント

  • これまでの授業では扱うことが難しい題材をテーマとする授業だったので、予想以上の学生が受講し、授業の内容も学生に好評だった。通常の講義と比べると、学生の目の輝きが違っていた。
  • 大学では、主に個人の技術の向上を目指している。これまでグループで課題に取り組むような課題はなかったが、今回はグループで課題に取り組んだ。学生にとっては、大変貴重な機会になったと思う。
  • チームを組んで何かに取り組むという形式の授業は他にないため、学生が想像以上にケース研修に熱心に取り組んでくれた。
  • 学生にとっては、ソフトウェア開発=コーディングというイメージであったものが、今回の授業で、プロジェクト内での意思疎通や、設計・インタフェース、顧客の重要性などを学び、これまでとは異なる文化に触れて、意識面での変化が生まれたのではないか。
  • 学生がプログラムを作る機会は大学にもあるが、学生のモノ作りは、他人に使ってもらうことを前提としていない。顧客の存在を意識した演習は、そのような意味でも、非常に意義がある。
  • 大学で学生が学んでいるのは、研究の方法や研究をするためのスキルであり、顧客が求めているものを効率的に作るためのプロセス等は体験できていない。そういったプロセスを体験する上で、今回の教育訓練は貴重な機会になったと思う。
  • 本学卒業生の最終的なキャリア目標は、プログラマではなく、マネジメントであることが多い。そのような意味で、学生のうちに、開発工程を一通り体験することができることは重要であると考えている。
  • 授業に企業講師が参加すると、良い意味での緊張感が生まれる。学生も、普段から接している大学教員の注意は聞かないが、企業講師に注意されると、おとなしく聞いている。
  • 外部から現場を経験した講師に来ていただくと、学生の緊張感を高める効果がある。
  • 就職活動で、自分自身の経験として今回の演習について話すことができ、そのような意味でも、今回の授業は役に立っているようである。
  • 学生は、SEという仕事を知っていても、その実態を十分に理解していないことが多い。演習を体験することで、仕事の内容が理解でき、それが、就職時にも役立っているようである。
  • 事業で実施したような実践的なIT教育(演習)は、前提となる知識がないと分からないことが多い。このような演習を早い段階で経験させることで、学生が、他の授業の必要性を実感することができる。
  • できるだけ早い時期に、今回のような教育訓練を通じて開発工程を学ばせたい。3年生から取り組むようでは間延びしすぎである。簡単な工程から複雑な工程まで、様々な授業を通じて繰り返し経験することで、組込みソフトウェア開発が理解できると考えている。

事業の意義・成果

学生に対する効果の他に、「学」側関係者自身も、産業界から有益な経験・知見等を得ている。そのような今回の事業の意義・成果は、以下のとおりであった。

【事業の意義・成果】

  • 学生の意欲を引き出す産業界講師の「教え方」が参考になった。
  • 開発工程や開発方法、作成すべきドキュメント、顧客との交渉、プロジェクトマネジメント等、ソフトウェア開発の実際を知った。
  • 教育の目標が明確になった。

事業で実施した実践的なIT教育に対して、「学」側関係者からは、総じて肯定的なコメントが多く寄せられている。しかし、以下には示されていないが、一部では「職業訓練的であって、大学教育には適さない」等の意見も聞かれており、「学」側の関係者間にも、やはり意識の差があることがうかがわれる。

今回の事業の意義・成果についての教育機関側関係者のコメント

  • 今回は、非常に人気がある企業講師だったので、講師の教え方も上手く、その点も参考になった。
  • 産業界で活躍している講師が、学生が日頃興味を抱いているような話題や、学生にとっても身近な話題を例として用いて、分かりやすく説明するなど、学生の興味を引き出すような教授方法を用いており、教え方という面でも、非常に参考になった。
  • 企業と連携したことによって、企業の実業務に則したテーマ、講座内容で面白み(興味)がある教え方、運営方法等についての知見を得た。また、実業務であるお客との折衝の仕方、プロジェクトの日程管理、コスト管理等について、大学では教えられない知見を得た。
  • 今回の講座開講時に、多くの学生からの問合せがあり、当初予定よりもグループを1つ増やすことになった。このような講座に対する学生の期待が、大学側の予想以上に高いことが分かった。
  • チームで開発を行うような授業が学生に受け入れられやすいということが分かり、今後のカリキュラムを考える上で、非常に参考になった。企業において、どのような仕事が必要とされるのかという点が伝わったことも、今回の成果と言えるのではないか。
  • 教育において最も重要なものとは、「どのようなものを学ぶことが必要なのか」、また「なぜそのようなものを学ばなければならないのか」、など、生徒にモチベーションを与えることである。ビジネススキルは、特に、教育だけでは完全に習得するのは難しいものであるが、今回の講義で、プロジェクトマネジメントが重要であるという“気づき”を生徒に与えることができれば、それも一つの成果ではないかと考えている。
  • ソフトウェアの開発について、大学で教えていることは、主にプログラムを正しく作成することである。しかし、そこから一歩踏み込み、他人が満足できるようなソフトウェアを開発する方法までを大学で教えることは難しい。大学教員は、企業で働いた経験があるわけではない。自分も今回の講座を通じて、ソフトウェアが、現実に企業でどう作られているのか、初めて知った。
  • 今回の教育訓練は、大学教員にとっても、非常に勉強になった。例えば、教員は業務で仕様書などを作成することはないので、開発にあたって準備する書類等は参考になった。
  • ソフトウェアのようなモノを作る授業では、“何ができればよいのか”という教育の具体的な目標が明確になる。このような授業を行うことで、教育の方向性が明確になるのではないか。

産学連携の必要性

事業を実施する前提となった産学連携の必要性について、「学」側は、様々な認識や意見を持っている。以下に、教育機関側の意見を整理する。

【産学連携の必要性】

  • 実務経験を持たない教員が、経験が必要なソフトウェア開発を教えることは難しい。
  • 大学教育には、基礎のみではなく実践も必要であるが、最新の技術知識が必要な実践的な教育の実施にあたっては、産業界講師の参画が必要である。
  • 例え産業界出身の教員であったとしても、教員は現場から離れているため、最新の技術に関する知識を持っていない。最新技術に関しては、産業界講師の方が詳しい。

産学連携の普及の方策として、産業界の人材の教員採用などが挙げられることが多いが、現実的には、教員になった時点で、実務の現場からは離れてしまうため、例え産業界出身の教員であったとしても、最新の技術に関する知見については、現役の産業界講師の助力を求めていることが把握された。教員採用を通じて、産業界と教育機関の人材交流が行われたとしても、最新の技術に関する情報・知見を得るためには、産学連携が必須とされていると言える。

産学連携の必要性に関する教育機関側関係者のコメント

  • 昔、企業は、大学では基礎を教えれば十分であると言っていたが、今は、その頃とは要求が変わり、実践的な教育を実施してほしいと要求するようになってきた。その要求を受け、大学でも実践的な教育を実施した方がよいと考えているが、実際のところ、大学単独で実践的な教育を実施するのは難しいのではないかと感じている。
  • 本学には、情報工学のカリキュラムとして、エンジニアリングが欠けているが、それを大学教員で教えることはできないという問題意識があり、それが今回の講座の実施につながった。
  • 本学のカリキュラムは、ソフトウェア工学を含めて、コンピュータサイエンスのほぼ全分野をカバーしているが、ビジネススキルが必要とされるプロジェクトマネジメントは、これまでカリキュラムに組み込まれていなかった。それを、試行的に実施したのが今回の講座である。
  • ソフトウェアの開発は、経験工学に基づいた分野である。そのため、実際の開発経験を持たない大学教員には、その理論的な側面しか教えることができない。開発において真に重要な部分(実際に開発する際に注意すべき点等)を教えることができるのは、産業界で経験を積んだ講師だけではないか。
  • 学生も、実社会で役立つことを学びたいと考えているため、基礎的な知識を教えるだけでは、役に立たないと感じてしまう。しかし、現在、企業で使われている技術や知識について学ぶとなると、学生も興味を持って非常に熱心に取り組んでくれる。最近では、実務的な講座に対する関心が強い。
  • 大学では、実践的な教育より、基礎の習得が重要だとする意見もある。確かに、基礎の追求が重要であることが事実だが、現実的には、基礎だけでは何もできない。従って、基礎と実践をバランス良く習得させることが重要だと考えている。
  • 基礎の習得には面白味がないので、学生も興味を持たない。実際にモノを作ったりするような実践的な演習を織り交ぜることによって、学生も興味を持って取り組むことができる。
  • 今回実施したような演習の基礎になるのは、開発の一連の流れであるが、これは、単体で教えられるようなものではないので、プロジェクト演習の形で教えることになる。しかし、プロジェクトを実施するにあたっては、開発のための技術が必要になる。その技術は、最新のものでなくてもよいが、できれば新しい技術を使った方が、学生にとっても面白い。そのため、基本を教える演習とは言っても、常に新しい技術についての知見が求められる。
  • 大学教員は、基礎理論を専門としているため、実際の製品を使った経験に乏しく、企業で実際に使われている技術や製品については、基礎的な知識しか教えることができない。また、目まぐるしくバージョン等が進化する製品には、大学教員では対応しきれない。大学教員は、最新の技術をフォローすることが仕事ではないので、新しい技術の演習を実施するためには、産業界の助力が必要である。
  • 実務に結びつくような実践的な講座は、大学側だけでは実施困難である。大学教員には、実際にプロジェクトマネジメントを経験している人は少ない。産業界出身の教員もいるが、産業界での仕事の内容が研究や開発だったという人材が多い。また、ソフトウェア工学を専門とする教員は少ない。また、ソフトウェア工学を専門としていても、論文が書ける分野(理論化されている分野や定量化が可能な分野)しか教えていないのが現状である。
  • 教授自身は産業界の出身だが、最新の事例を取り入れるために、産業界講師を呼びたい。大学だけで実施していると、内容がすぐに陳腐化してしまう。
  • IT関連の技術に関しては、移り変わりが早く、産業界出身の教員でも、最新の技術に精通しているわけではない。そのため、地元のソフトウェアハウスと関係を保ち、最新の技術については、産業界の協力を得られるようにしている。
  • 大きな目で見れば、大学は少子化の流れの中で淘汰されていく。そのような流れに取り残されないように、今回のような新しい試みを積極的に取り入れていくことが重要であると考えている。

産学連携教育を進めるにあたっての課題

次に、産学連携の必要性に加えて、産学連携教育を進めるにあたっての課題についての教育機関側の意見を示す。課題に関しては、様々な意見が寄せられたため、それらの意見を「産業界講師の任用に関する意見」「産学連携教育における教育機関側(「学」)の役割に関する意見」「産学連携教育における企業側のインセンティブに関する意見」「実践的なIT教育の普及・継続に関する意見」に分類して整理した。

産業界講師の任用

産業界講師の任用に関しては、常勤教員としての採用には博士号が必要とされる場合が多いこと、非常勤講師としての採用に関しては謝礼が安価であること、などが課題として挙げられた。しかし、産業界講師の任用状況は、その教育機関の姿勢や方針によって大きく異なるため、以下のコメントにも、それらの差が反映されている。中には、教員の半数以上が、産業界出身の客員教授で占められている大学もあったが、この大学では、博士号を採用の必須要件とはしない他、産業界講師を「客員教授と」として採用している。

産業界講師の任用に関して

  • 教員になるために博士号を条件とする教育機関が多いのが、産業界講師の採用にあたっての一番の障害ではないか。システム開発で論文を書くことは難しいため、実業に携わる産業界で博士号を持っている人材は、ほとんどいない。産業界出身の大学教員には、実際の開発ではなく、研究などに携わっていた人材も多い。
  • 今回の経験から、産業界講師に適任なのは、企業で教育に従事した経験がある人材であることが分かった。これは、これまでには無い視点である。民間出身者と言っても、研究に従事してきた人材であれば、大学教員とそれほど変わらない可能性がある。
  • 産業界の講師については、スポットで講演してくれる人材には事欠かないが、IT企業の第一線で働くなどの社会経験があり、かつ集中講義形式で学生の演習を担当してくれる人材が居ない。また、見つかったとしても、大学側が必要な報酬を支払えないという課題がある。
  • 産業界から適切な人材を探すことが困難であるため、今年度から特任教授制度を設置した。この制度の対象者としては、「退職後、大学で博士号を取得する代わりに、学生に対する教育も行う」という人材を想定している。特任教授には、学科単位の会議への出席やシラバスへの意見提出が求められる。
  • 非常勤講師に対する謝礼や報酬が非常に安いため、依頼できる人が限定されてしまう。第一線の現役社会人に対して講師を依頼することは難しい。
  • 現在、大学側が、非常勤講師の数を減らす方向に動いているので、企業講師を非常勤講師として任用することは難しい。特任教授の方が登用し易い。
  • 現在、大学内でも、一部の組織では、教員採用の際の基準を変え、産業界出身者を採用しやすくしているが、学生に対する教育を行う通常の学部学科では、従来どおりの採用基準が用いられている。
  • 産業界からの講師の採用条件として、博士号の有無は問わない。また、教育に関する実績等も評価しない。それよりも重視しているのは、課題設定の適格さと生徒の求めるものに対応し、柔軟(インタラクティブ)な授業が行える能力。採用の面談で、プレゼンテーションスキルや、コミュニケーションスキルを評価し、インタラクティブな授業が行えるかどうかを評価している。
  • 外部から採用した講師には、「非常勤講師」という肩書きを与える大学が多いが、本学では、大学の規定を変更して、あえて「客員教授」という肩書きを与えている。「客員教授」とは、通常、研究実績等のある教授が他大学で教える際などに用いられる呼称であるため、産業界の講師としても、自らのキャリアにとって大きなプラスになる。

教育機関(「学」)側の役割

産学連携教育においても、「産」には担えない「学」が果たすべき役割は存在する。そのような役割についての意見を、以下に紹介する。

産学連携教育における教育機関(「学」)側の役割に関して

  • 「学」の役割は、基礎知識を修得させた学生を社会へ送り出すこと。実践的な教育は、単発ではなく、カリキュラム全体として考えることが重要。実践的な講座を一つ開講するだけで十分であるならば、企業に入社してから行えばよいことになってしまう。学校の役割は、バランスの良いカリキュラムに則って、この分野の基礎知識を、網羅的に学生に修得させることである。また、その知識も、ただ机上で学ぶだけではなく、体験に基づいている必要がある(例えば、“ウォーターフォール型開発”という単語を知っているだけではなくて、それを実際に一通り経験していることが大切)。
  • ITほど、変化のスピードが速い分野は他にはない。IT分野は、その原理原則を見極めることが難しいほど、技術等の移り変わりが激しい分野である。そのような分野において、「学」に最新技術に関する教育を提供するなどの役割を期待することは非常に難しい。そこで、その部分(最新技術の提供)を、この分野では、「産」が担っていく必要がある。一方、「学」も、産業界で使われ始めた新しい技術や開発方法論の研究・検証など、「産」を理論的にバックアップする役割が求められている。
  • 原理原則は、企業内教育ではなく、学校で教えた方が良い。現場のエンジニアの知識はOJTに基づいていることが多く、理論等の基礎を体系的に教えることができる人材は少ない。
  • 最新の技術に関する知識だけでは、内容が薄すぎてしまうので、そういった知識がどのような意味を持つのか、もっと本質的な部分を、大学側が学生に説明する必要がある。
  • 企業講師は、要領よく一気に全てを説明してしまう傾向がある。しかし、教育という観点からは、一気に説明するのではなく、学生にまず考えさせ、様子を見ながら徐々に説明していった方がよいこともある。
  • 産業側がケースや教材を提供する場合、それが学生のレベルに合致しているかどうかを判断できるのは学校側のみ(産業側には不可能)。今回のケースでは、普段システム構築等に馴染みがない学生に対して、企業のIT投資案件についてのケースが提供されていた。また、ロールプレイの際、想定されている場面が理解しにくく戸惑っている学生が散見されたが、これも、学校側が、学生の実務に対する理解度を、産業側に的確に伝えなかったために起こった事態であると言える。従って、教材等の提供を産業側に任せる場合、学校側は、提供された内容が対象となる学生に合致するかどうかについて、的確に判断する必要がある。
  • 普段、学生がどのような指示の下で授業を受講しているかを熟知しているのは学校側(具体的には、担当教授)である。従って、講座の運営は、産業側に全面的に任せてしまい、学校側は傍観者に徹するというのではなく、学校側も主体的に講座運営に関わり(作業の指示を教授が補足する等)、講座が常にスムーズに運営されるよう努めることが重要。
  • 企業が必要とする人材は、企業に入ってから育てればよいという見方もあるが、それでは大学という存在が無駄になる。大学では4年間もの教育期間があるのだから、それを有効活用し、大学のうちから、人材育成を進めることが重要である。
  • 企業でも、同じような演習を実施することはできるが、多忙な企業で、教育機関のような丁寧な授業が実施できるとは限らないので、学生のうちに、大学で演習を体験しておくことは重要である。
  • インドでも、企業入社前の段階での教育の前倒しが求められており、業界全体として、大学側に問題提起を行っていると聞いている。

企業側のインセンティブ

産学連携教育における企業側のインセンティブは、分析を試みた重要課題の一つであった。この点については、企業側の意見を後述することとし、ここでは、「学」側の意見・感想を紹介する。この中には、企業出身の大学教員から、示唆に富む意見も寄せられている。

産学連携教育における企業側のインセンティブに関して

  • 企業側にとっては、非常勤講師に対する謝礼は非常に安く、優秀な学生を獲得できるというメリットもないため、大学と連携する(大学へ人材を派遣する等の)インセンティブが働きにくい。
  • 今回は、連携先の企業から、比較的寛大な協力をいただいているが、今後は、連携する企業に優秀な学生を採用できるなどのメリットがないと、実施するのは難しい。
  • 企業講師にとってのインセンティブは重要だと思う。しかし、謝金は数千円/時間しか払えず、今のところインセンティブとなり得るものは、非常勤講師という肩書きが得られることくらい。今後の継続に向けては、まずは非常勤講師を大学側と交渉し、認めてもらうつもりでいる。
  • 企業は、大学と協同でカリキュラムを作成することで、そのカリキュラムやノウハウを企業内の人材育成に用いることができる。また、外販用の教育サービスとして、カリキュラムを活用することもできる。大学との連携は、知名度の高い大学であれば、企業にとってもブランド力の向上につながるほか、大学と密接な関係を保つことで、企業内の優秀な人材の輩出先も確保できる。さらに、大学の方が、中立的な立場で調査研究を行いやすいため、大学と協同で調査研究等を行えば、企業単独で行うより、活動の幅が広がるというメリットもある。

実践的なIT教育の継続・普及

実践的なIT教育の継続・普及のために、それらに関する課題の解決策を検討することは、事業の大きな目的の一つであった。しかし、実態としては、事業実施年度と同様の規模・体制での継続・普及には、様々な工夫が必要とされ、企業側・教育機関側双方が協力して工夫を重ね(規模を縮小する、教員が企業講師からノウハウを学ぶ等)、翌年度の実施につなげているケースが多く見られる。
ここでは、それらの取り組みに関して、「学」側の問題意識を紹介する。

実践的なIT教育の継続・普及に関して

  • 大学としては、今後も産学連携講座を進めていきたいと考えているが、外部講師を招聘するための費用の調達が難しいため、産業界や国の支援がなければ、継続的に実施するのは困難である。
  • 大学教員を評価する際、現在のような研究実績についてのみの評価だけではなく、教育に対する取り組みについても評価する仕組みがないと、教育に対する努力が報われない。
  • 実践的なIT教育を普及させるために、FDプログラムなどの研修を受講した教員を認定し、大学の評価の際に、認定された教員の数を評価するなどの、何らかの仕組みが必要ではないか。行政側で、ぜひ検討していただけるとよい。
  • 教育における産学連携では、大学側の資金が不十分な場合が多く、充実した産学連携教育を実現するには、企業側に持ち出しをお願いせざるをえない状況にある。しかし、このような状況では、教育に協力できる企業を探すのは難しい。現在は、企業側も、日本の現状に対する危機感を持っているからこそ協力してくれるのだと思う。現状では、残念ながら、そのような危機感・使命感を持った企業に期待するしかない。将来的には、そのような企業から、大学側が数年程度でノウハウを吸収することが必要であると考えている。しかし、演習については、大学教員のみで実施するのは困難である。特に、トラブルが起きたときの対処は難しい。ソフトウェアが動かなかった場合や、適切に修正できなかった場合に、開発経験の少ない大学教員では、企業講師のように的確かつ柔軟なアドバイスを行うことは難しい。

なお、実践的なIT教育の継続のためには、教育機関側が、企業の協力を得ずに自立して教育訓練を実施できるようになることが理想的である。そのための方策の一つとして、教員が企業の実務に参加する“教員の企業インターンシップ”が論じられることが多いが、企業インターンシップの実施は、下記に示すような事情から、一般的には困難であると考えられている。

大学教員のインターンシップに関して

  • 産学連携講座を始めて、3年程度経過したら、企業の助けを借りずに、大学が自力でその講座を実施できるようになる必要があるが、そのためには、大学教員が、企業講師と同じ内容を、自分で教えられるようにならなくてはならない。そのための方法として、産業界での大学教員のインターンシップなどが効果的ではないか。【企業関係者】
  • 企業へのインターンシップ参加は、通常の業務に加えて実施しなければならず、現実的には難しいことが多い。また、教員の実績(キャリア)としては評価されにくい。
  • 過去に、企業への大学教員のインターンシップを実施したことがあるが、教員が企業内での仕事のやり方に馴染めず、途中で挫折してしまった。
  • 最近は、セキュリティ等の問題上、同じ企業の社員でも、他のプロジェクトの開発に参加することは難しくなっている。よって、そのような状況では、社外の大学教員が実務に参加することはきわめて難しい。【企業関係者】
  • 情報系の教員であれば誰でも産業界の講師の持つノウハウを吸収できる訳ではない。実際には、「ソフトウェア工学」を専門とする教員でなければ、企業ノウハウを習得するのは難しいのではないか。

情報工学系学部学科の人気

産学協同実践的IT教育関連事業では、情報工学系学部学科に対する人気の低下も、一つの問題として認識されていた。そのため、教育機関側の関係者には、ヒアリング等でその現状を尋ねた。
以下には、その結果を示す。教育機関によって、状況には差が見られるものの、学生の人気の低下やレベルの低下に関して、危機感や問題意識を持っている教育機関が多い。

情報工学系学部学科の人気についての教育機関側関係者のコメント

  • 情報系には技術志向の強い学生が多く来ているが、総数としては減りつつあるのが正直な感想。
  • 本学科では、それほど深刻な人気の低下は感じていないが、危機感は持っている。
  • 情報系学科は人気がないわけではないが、受験生の熱が冷めてきている感じを受ける。大学受験者全体の減少を考慮しても、以前と比べると、情報系学科の受験者数は低下していると感じる。
  • 学生のレベルは全体的には下がっているという印象を持っている。
  • 学生のレベルについて、上位の学生のレベルは昔から変わらないが、学生の間のバラツキ(上下差)が広がっていると感じる。
  • 情報系の倍率は下がっている事実は、否定はできない。しかし、これは大学のみががんばってもどうなるものではない。情報産業自体の魅力をあげてもらって、その分野の専攻を希望する学生の数を増やして欲しいと願っている。
  • 電気・電子・情報系は、有名国立大学でも志願倍率の低下が問題になっていると聞いている。
  • 入学試験における倍率は3倍以上が望ましい。それ以下になると、優秀な人材が入ってこないという経験則が、学内で共有されている。【国立大学】
  • 日本では、理系の生涯賃金の低さが指摘されている。また、電気・電子関係の仕事は、給与が高いわけでもなく、海外への仕事の流出も進んでいる。電気・電子・情報系の人気が下がっているのは、学生が、そのような事実を敏感に感じ取っているからなのではないか。
  • 高校生は、マスメディアからの影響を強く受けている。現在では、環境、ロボティクス、エネルギー、宇宙などがキーワードであり、このキーワードに関わる学部・学科は、概ね人気が高い。
  • 組込みという分野は、学生にあまり認知されていない。
  • 学生は、“フロンティア”が見える専攻を選ぶ。例えば、物理などは、未知の部分が多いため、フロンティアとして現在でも人気がある。ITはありふれているので、学生にとっては日常的であり、フロンティアとして見られていないのではないか。

情報サービス・ソフトウェア産業への学生の就業状況

産学協同実践的IT教育関連事業では、情報工学系学部学科の学生の就職先についても、教育機関に尋ねた。就職状況は、各教育機関の立地や特性によって様々であるが、「情報工学科の学生に対する需要が増えている」という指摘が複数の教育機関関係者から聞かれたことは、注目に値する。これは、既存の調査結果を裏付けるものでもある。

情報サービス・ソフトウェア産業への学生の就業状況についての教育機関側関係者のコメント

  • IT業界への就職は多いが、就職前に仕事の具体的な中身を理解していない学生が多いと感じる。
  • ITの職種では、3K的な側面があることを学生は知っているが、「大変だからやめる」というよりも、「やりたいから志望する」という傾向が強い。
  • 本学の卒業生は、大手電機メーカーを含めたIT関係に就職することが多く、就職の状況は過去とそれほど変わっていない。優秀な学生が他業界に行くといったような傾向は、特に見られない。
  • 情報サービス・ソフトウェア企業よりも、大手製造業(電機、自動車など)の人気が高い。
  • 地元には、自動車関連の企業が多いため、大学院を含む工学部の学生の半数は、組込み系の人材として採用されている。これまで、企業側は、大学教育にはあまり期待しておらず、自社で人材を育成するという意識が強かったが、最近では、企業側にも、やはり大学で基本を学んでいる人材は違うという認識が生まれ、情報工学科の学生に対する需要が増えている。(今年度、就職希望者は100%就職先が決定した。)
  • 近年、企業は、自社の研究に関連する研究をしてきた学生を採用する傾向が強まっており、表には出していないが、学生の要件を絞り込んできていると感じる。これは、企業では社内教育を十分に実施できないこともあり、企業が、もともと技術を持っている学生を採用したいと考えているためではないか。

「産」側関係者の声

産学協同実践的IT教育関連事業では、最終年度である平成18年度に、過去4年間の間に事業に携わった企業(「産」)側関係者に対してアンケートを実施し、産学連携教育に関する企業側の意見の収集を試みた。ここでは、その結果や、過去に実施されたヒアリング調査から、「産」側関係者の声を紹介する。

事業における企業側の成果

事業では、産学連携教育の継続・普及のための方策の検討が行われてきたが、継続・普及のためには、“双方向”の産学連携、すなわち、教育機関側だけではなく、産学連携に参画した企業側にも成果が残ることが重要であると認識されてきた。教育機関側の資金的余力が少ない現状では、企業側に直接的なメリットが少なければ、産学連携教育を長期に継続して実施することは難しい。
そのような企業側のメリットを把握するために、平成18年度には、企業側関係者に対するアンケートを実施し、「実践的なIT教育の実現」という事業の本来の目的以外に、企業側で達成された成果を尋ねた。その結果が、下図である。

C511-4-28

「実践的なIT教育の実現」以外に企業側で達成された成果(複数回答可)

(企業関係者アンケートの結果から:N=64)

上図によれば、企業側の成果として、「講師・インストラクタの自己研鑽・キャリアアップ」という回答が最も多く、半数以上の6割にも上る企業関係者が、これを成果として挙げている。以下に示すアンケート回答にも見られるように、“学生に対して教える”という経験は、講師・インストラクタとして教育訓練に参加した企業人材にとっては、通常の実務では得難い有益な貴重な経験と捉えられている。一方、企業側の成果として予想されていた「企業認知度の向上」や「学生の採用」等については、比較的回答が少ない結果となった。以下には、アンケートの自由回答欄に寄せられたコメントを示す。

情報サービス・ソフトウェア産業への学生の就業状況についての教育機関側関係者のコメント

    • 開発業務の中では、大勢の前での発表、講義、あるいは教えるという機会が少なく、その経験ができたことは大きい。
    • 日常業務では経験することの少ない、人に教えることの難しさを感じ、我々自身も大きな勉強となった。
    • 人に教えるという立場に立つことで、若い社員にとっては非常に良い経験をさせていただけたと思います。
    • 優秀な学生の訓練にあたって、自己の勉強不足が分かり、自己研鑽にはずみがついた。
    • 講義準備のために文献を読み直したり、講義資料作成を行う過程で、講師のスキルアップが図られた。
    • 相手が学生であり、普段とは異なる対処が求められるので、コミュニケーションスキルなどを改めて見直す機会を得ることができた。
    • 実務家向けとは異なるスキルが必要とされる学生向けの講義を実施することで、インストラクションスキルを向上できた。
    • ある一定期間生徒を受け持ち教えることによって、講師自身が自身の存在価値を感じ、モチベーションが向上した。

「最近の学生の状況・スキル等を把握することができた」

  • 学生の状況を肌で感じることができた。
  • コーディング実習などにおいて、高専在学の学生のスキルの高さを実感できた。
  • 自分の学生時代と比べると、理論より実践力を持った学生が多くなったと感じた。
  • 基礎学力の低下と論理的思考能力の著しい低下を垣間見た。大学にふさわしい授業を実施することは困難と思われた。ただし、意欲ある学生もおり、企業にて鍛えられれば遅れをとりもどせると思われる。これまでの教育で学習の動機付けが欠けているように思う。
  • 研修中のコミュニケーションから、学生が希望する職種(SE・開発)や業種などを理解することができた。
  • 学生の組込みシステムに対する認知度を確認でき、今後の新人研修のカリキュラム作成の参考にすることができた。
  • 大学での講義内容や研究内容の概要を知ることにより、新卒人材候補に対しての育成教育カリキュラムを組む上での参考となった。

「技術者としての社外貢献になった」

  • 組込みソフトウェアの開発技術だけでなく、組込み業界の動向や面白さを学生に伝える事ができた。
  • 実施代表機関から当社講師に対し感謝状をお送りいただいたこともあり、講師自身が地域貢献を実感できたと思う。
  • 弊社理念の一つでもある人材育成の面でも、社外貢献できたと思う。
  • 講師・インストラクタを務める社員は、「社会的な取り組みに対する誇り」を感じている。

「大学とのチャネルが確立・強化された」

  • 教員との情報交換が可能になった。
  • 協力して頂いた教官とは太いチャネルを築けた。
  • 関係強化になった。
  • より深くコミュニケーションが取れるようになった。
  • 既に実施先の大学とのチャネルは確立されていたが、事業以降、教授だけではなく、事務局との連携も図れるようになった。
  • 具体的なカリキュラム作成および授業を通して交流を図ることができた。とくに教育機関においても、企業で必要としている開発標準にしたがった実践的な開発方法の教育に関心を持っている熱心な教官がおられることがわかったことは収穫であった。
  • 大学の先生方との意見交換を通じて、当社のスタンスや方針などをお伝えできたことで、当社の認知度が上がり、学生をご紹介いただける可能性が増した。
  • 大学教員を研修講師として招き、企業単独では困難であった体系的な研修を、当社の主催研修として実施することができた。

「大学における教育内容が把握できた」

  • 現状の大学カリキュラムの把握ができた。
  • (大学における)具体的な授業体系、内容と教員の考え方の実情を知ることができた。
  • 研修受講のための前提知識を決めるにあたり、大学で実施されているカリキュラムの概要を把握することができた。

「学生に対する/世間における企業認知度が向上した」

  • 教育現場に企業が赴くことで、企業名だけでなく業務内容、求める人材像などについて詳しく説明する機会を得ることができた。
  • 地域の情報関連企業がどのような仕事をしているのかを、参加学生に認識させることができた。
  • 企業説明会への来場および弊社への就職志望者数が増加した。
  • 地場のIT企業に関する認知度が上がり、就職先の1つとしての認識を持ってもらえた。
  • ブランド力の乏しい地元企業にとっては、その存在を学生に知ってもらう格好の機会になった。受講者の採用という直接的な成果につながらなくても、長い目で見ると大きなメリットがある。
  • 「教育訓練プログラム事業報告書」がWebサイトに掲載されたことにより、認知度が向上した。
  • セミナや講演会での発表の場があり、人材育成への取り組みでの認知度向上が見られる。

「地域における産業振興につながった」

  • 県の情報サービス産業協会などを通して地域の情報通信企業とのIT人材育成に関する交流を行うための基盤が構築できた。
  • 地域貢献を社是とする弊社にとっては、このような教育を受けた学生を地域に輩出できるということは、非常に有意義なことと考えています。
  • 地域の活性化や地場・業界の発展のために、「優秀な人材の育成」は不可欠であり、この中にあって本取り組みは、大学教育をより効果的にするために、企業側として何が貢献できるかといった観点のもとに行われている。そのような効果(成果)は、一朝一夕に得られるものではないがこの継続性こそが重要で、優秀な学生を輩出していく土壌となることを期待(確信)している。

産学連携教育の継続・普及にあたっての課題

企業側関係者に対して実施されたアンケートでは、産学連携教育における企業側の成果に加えて、その継続・普及にあたり、企業側が感じている課題についても尋ねた。
下図は、その結果である。

C511-4-29

産学連携教育の普及・促進にあたっての課題(複数回答可)
(企業関係者アンケートの結果から:N=64)

ここでは、「講師・インストラクタ調達のための費用の不足」が、最も大きな課題として挙げられており、全体の半数近くの回答者が、この選択肢を挙げている。この認識は、教育機関側の認識とも一致しており、産学連携教育にあたっては、講師・インストラクタの調達が、最重要課題となっていると言える。
また、続く課題としては、「(企業側に)直接的なメリットが見えにくい」ことが挙げられており、先に述べたような、企業側の直接的なメリットの少なさが、産学連携教育の継続・普及にとっての大きな課題となっている事実が、ここからも読み取れる。
なお、上図の上位5つの回答は、すべて、費用負担に関するものか、企業側の事情によるものとなっており、教育機関側の事情によるものは、相対的に見ると、回答率が低い。これより、企業側は、産学連携教育の継続・普及のためには、企業か教育機関のいずれか(もしくは双方が)負担すべき費用の問題(講師・教材のための費用調達)、もしくは、企業自身が抱える問題(メリット・時間的余裕の確保、合意形成)の解決が必要であると認識していることが分かる。

以下には、各項目に関して、企業関係者より寄せられた意見を示す。

「講師・インストラクタ調達のための費用が不足している」

  • 大学側は授業準備や拘束時間に対する企業側の負担に対して無関心であり、時給を支払うことだけで相応の負担をしているとの認識があるように感じられる。このような状態では、ボランティアとしての費用負担以上のものは計上しにくい。
  • 全体的なコース企画・設計・教材および講師調達費用など、全般的に一般企業向けの半額前後と想定しています。ビジネス的な採算面を考えると多くのリソースを投入するのが難しい状況です。短期間であればある程度の対応は可能ですが、長期間の連携となると公的機関などの支援が必要と思われます。
  • 講師が務まるような人材は、ビジネスの現場で多忙を極めている。また、そういう人材を講師にあてがった場合、売上の減少や代替人材の調達費用発生などを覚悟しなければならず、人材層の薄い企業にとっては大きな障害となる。
  • 継続にあたり講師費用が不足している。県が定める講師謝礼が1時間約5,000円となっており、1日2時間または4時間程度の講義の場合、準備作業や当日の移動時間等を含めると原価割れとなってしまう。
  • 大学での講義はコマ(90分)単位だが、移動時間などを考慮すると丸一日拘束されることになる。この点に鑑みると予算不足である。
  • 大学内で行う講師は、事業として行うか、地域貢献を行うかで分かれるが、事業として行うには財源が不足している。一般的に、講師は時間2万円~5万円の配意が相場であるが、大学内の財源はそこまで見込めていない。
  • 企業団体等の予算で賄えるのは、1コース当たり、講師・インストラクタ1名分であり、効果的な教育訓練をするために実質的に掛かる費用をまかないきれない。ボランティア的な要素だけでは、事業継続は難しい。
  • 今回は十分に費用をまかなうことが可能でしたが、今後大学のみの実施となった場合、10,000円/日といった額になると聞かされています。教育なので儲けを考えずに動くことも可能ですが、どこまでも無理が利くとは思えません。
  • 企業で優秀とされている人材は、大学教官より高給であり、大学へは異動したがらない。能力に応じた給与を保証しなければ、個人としてのインセンティブは無い。企業から派遣する場合も、一線級の人材は、企業にとって稼ぎ頭であり、廉価では貸し出せない。

「企業側に直接的なメリットが見えにくい」

  • 産学連携の際の企業への報酬等、営利企業としては現状ではメリットがない。
  • 人材採用などのメリットはあるが、産学協同でのビジネス推進としてのメリットは無い。
  • 直接的なメリットはなかなか見えないと思われる。間接的には講師のスキルアップ、将来的な相互発展が考えられるが。
  • 金銭的なメリットや優秀な人材確保というメリットに直結していない。
  • 例えば新卒人材の優先確保などのメリットがはっきりと見えないと厳しい。
  • 受講生に対するPRにはなっているが、受講生が自社へ就職してくれる等の具体的なメリットが見えにくい。
  • 入社するか分からない人材に企業のノウハウを含めた教育をするのはメリットがない。
  • 多少なりとも直接的メリットはある(教える側の意識アップ等)が、教育を受けた学生が講師の企業に就職する訳ではないため、単に技術の流出となる可能性がある。

「教材調達・改訂のための費用が不足している」

  • 実践教育に必要な最新のソフト、ハードは高額である。
  • ソフトウェア開発環境購入のための費用が不足している。
  • 大学側の要望に対応した研修を実施するにあたり、教材開発の新規作成が必要とされ、そのために多くの開発工数が必要となる。
  • 高度な教育を行うための教材は高価であり、2~3万円するものもあるが、大学で使用する場合数千円が相場となるので、費用と見合った適切な教材を探すのが困難である。また、独自に開発しても、使用人数で割ると割高になる。
  • 現状では、改善をする場合のアウトソース費用がないため、作りっぱなしになる。
  • 教育訓練プログラムで使用する教材(ソフト)の改訂費用に対して公的な補助があるとよい。
  • ビジネス前提で予算を消化した場合、まとまった教材をつくることは不可能。様々なボランティア仕事が前提となる。

「(企業側に)産学連携教育に取り組む時間的余裕がない」

  • 時間的余裕≒人材の余裕と置き換えて考えると、上述したように通常の企業では、人材は常に不足している状態で、人的余裕はまったくないというのが実状。
  • 産学連携事業については企業側として相当の作業工数がかかるが、実施期間を通して、専従的/準専従的に要員を宛てる余裕がない。
  • 大学のカリキュラムの調整によっては、長期間講師等を派遣することになるため企業の現場との調整が必要となる。
  • 時間的余裕がないことは当然であるが、それを調整してまで行うメリットが見いだせない。
  • ビジネスとしての取り組みなら可能。

「(企業側で)産学連携教育に対する組織的な合意形成ができない」

  • 直接的なメリットが見えないことです。入社後の教育コストを考えると大学で教育してほしいが、連携教育のコストを負担しても回収できるかどうかは不確実だからです。
  • 企業にとっても、社内でのPRが難しい。今回は、経済産業省事業ということで認めてもらっているが、大学で産学連携講座を実施しても、企業内では、それほど評価されない。
  • リソースを提供する場合、共同研究と違って、企業にとっては直接的なメリットが無いため、寄付となり、株主説明が難しい。本来、教育は教育機関の責務であり、企業に負担を求めるのはおかしい。現状の余りのひどさに、やむにやまれず協力しているのが現状である。

「(教育機関側の)授業時間の確保が困難」

  • カリキュラムの変更のための(大学側の)合意形成に時間が掛かる。
  • 現在の既存の教育体系でも、学生はかなりハードな授業を受けており、それぞれ質が高い。追加で新たな実習などを盛り込んでいくのは難しい。
  • 企業側として納得できるレベルまで教えるとなると、網羅的な内容だとまったく時間が足りない。経験を積むのが一番良いのだが、それを授業時間のみで行うのは難しいと思える。
  • 既存のカリキュラムの変更は難しく、また通常授業の飛び飛びの日程では非効率かつ90分単位の短時間では講師の日程調整が難しい。その点では、夏季休暇中などの集中講義が望ましいが、この場合は学生が参加しづらいと思われる。

「(企業側に)適切な人材がいない」

  • その期間、専属であたれる人材の確保が難しい。
  • 実戦経験と教育技術を兼ね備えた人材は意外と少ない。
  • 講義、発表をすることに不慣れな人が多く、人材が限られている。
  • 大学教員になるために博士号が必要とされるという条件は、企業から大学へ人材を派遣する際の障壁となっている。ITサービス産業界の人材で、博士号を持っている人材はほとんどいない。また、多くの場合、大学教員になると給与が下がるので、その点も、企業から人材を派遣する際の大きな障害になっている。

「(教育機関側の)受け入れ体制が整わない」

  • 技術者育成を本気で考える制度がない。教授は研究成果でのみ評価され、教育では評価されない。
  • 事務部門が保守的なため、新しい制度の設計ができない。
  • 企業が必要としている実践的な教育に関心を持つ教官が、まだ大勢を占めるに到っていない。
  • 大学の内部の制度上の課題が大きい。非常勤講師として認められるかどうかが学内でも認知度を測るバロメータとなる。

「(教育機関側の)教育方針と合わない」

  • 論文重視で、実践を軽蔑する風潮がある。研究重視、教育軽視の風潮がある。
  • IT教育の到達目標が大学、学部、担当教官の間で確立していないように思われた。また、履修した科目名に応じたスキルが学生に獲得されておらず、授業内容に問題があるように思えた(Wordのオペレーションを大学で教えている等)。産学提携教育は学生側に基礎学力があることが前提で、それは大学側の義務であると考える。
  • 教育とOJTを組み合わせることができる企業に対し、教育機関では教育のみで終わってしまう。

「高等教育機関と企業を結びつける機関の費用が不足している」

  • 企業と大学を結びつけ、教材等の資産を継続的に蓄積、維持、管理する機関が必要である。
  • 高等教育機関と企業を結びつける機関を運営する場合、当面はボランディア的な業務となる。専任の担当を置きたいが、その場合の人件費が不足する(500万円/人年)。
  • 大学・企業間には直接のチャネルがないため、その間に入って調整を行う機関が必要とされるが、公的支援等がないと、その機関にコーディネートを依頼することができない。

「(教育機関側の)学生が集まる見込みがない」

  • 産学連携教育のプログラムが、大学単位と同等のものとして扱われたり、連携先となる企業への就職など、学生にとって直接的なメリットが見られないため、受講者を集めるのが難しい。
  • 学生にもっと勉強をがんばれと地域のIT企業がメッセージを送っても、今の学生には響きにくい状況にある。地域の企業から話を聞くと、学生の間ではIT企業への人気は下がっている。産業に人気があれば、企業からがんばれと言えば、学生も反応するだろうが、現状では、「そんなに勉強しなければならないのであれば、IT業界に就職しなくてよい」という学生が出て、逆効果になりかねない。

その他

  • 大学・企業間には直接のチャネルが無いため、その間の調整を公的機関等に行っていただかなければ、今回のような産学連携教育は行えない。
  • 講師を派遣する体力のある企業は参加できるが、そうでない企業の参加は難しい。

産学連携教育の継続・普及に向けて

続いて、アンケートやヒアリングで寄せられた様々な意見から、産学連携教育の普及・継続に向けた意見として、“産学連携教育の必要性”や“産学連携教育に取り組むメリット”などについて、企業側の考え方を示す多様な意見を紹介する。

産学連携教育の必要性

元々、企業側の問題意識に基づく“産学連携教育の必要性”についても、事業では、企業から具体的な意見が寄せられた。以下には、それらの意見を紹介する。

産学連携教育の必要性

  • 地元の中小企業では、1~3ヶ月程度のプログラミング教育は可能だが、何ヶ月もかけて、基礎理論からじっくり教えている時間的余裕はない。当社でも、新卒人材には、3ヶ月程度で実務に参加してもらっているが、3ヶ月という短い期間では、基礎からは教えることはできない。そのため、大学で、基本情報処理程度の基礎理論や、ネットワークなどについての基礎知識は、しっかり学習してきて欲しい。基本的な知識は、企業で時間をかけて教えている余裕がないが、そういった基本知識を知らないと、業務の幅が非常に狭くなってしまう。実際の業務では、サポート業務なども多く、プログラミングの知識だけでは対処できないことも多い。また、基本的な知識を持っている人材と持っていない人材では、その後の成長の速度も異なる。
  • 即戦力となる学生を作るためには、技術教育の他にも必要なものがある。その部分については、企業でなくては、学生に教えることはできない。企業参画は必要である。
  • 自分たちが講師を勤めることによって、大学の授業が社会でどのように役立つかを伝えたい。
  • 産業界の強み(=現場だから分かっていること)とは、要するに、過去のトラブルについての知見である。大学が自立的に教育訓練を実施するためには、その知見を産業界から大学に伝えることが必要である。
  • 産学連携教育を効果的なものとするためには、協力する企業側の体制も重要である。現場技術者と大学側をつなぐために、企業側にも教育の専門家が必要とされる。

なお、実践的なIT教育を受講する適切な学年については、「学」側関係者の意見としても紹介したが、「産」側からも、以下のような意見が寄せられている。

適切な受講学年について

  • 今回のような実践的なIT教育を経験することによって、自分が大学で学んでいることが、社会に出てからどのように役立つのかを理解できる。そのような意味では、企業の即戦力を育成するというよりは、受講することで、大学のカリキュラムがより一層有効になる(学生がさらに意欲的に取り組めるようになる)という点に、このような教育訓練の意義があるのではないか。3年生という時期は、そういった体験をするのに適した時期であると思う。
  • 現在の内容であれば、3年生が適当であると思うが、もっと平易な内容の演習を1年生のうちに体験してもよいかもしれない。このような演習を体験することで、自分の目標が把握でき、また、仕事の実態やイメージを掴むこともできる。自分が学習している内容の意味が分かるという意味では、早いうちに実施してもよいのではないか。学生が、目標を持ち、大学で勉強する内容に早い段階から興味を持てるようになれば、勉強にも身が入るはずである。

また、個別事業の中には、米国人講師が参加した事業もあり、そこでは、米国の大学教育や新卒採用の現状についての情報を得ることができた。以下には、参考までに、それらの情報を示す。

米国の大学教育・採用の状況(米国人講師から)

  • アメリカの大学でも、今回実施したような演習を行っている。しかし、学生のモチベーションは、アメリカの学生の方が高いと感じる。
  • アメリカの大学には、サバティカル制度があるので、教員が企業に就業して、また大学に戻ってくるといったことが可能である。
  • AIなどの分野は、企業より大学で研究が進んでいるが、ネットワークやセキュリティなど、企業で用いられる技術については、大学よりも企業の方が進んでいる。
  • マイクロソフトなどのアメリカのIT企業は、論理的な思考力を重視して新卒学生を採用する。そのため、コンピュータサイエンスを専攻した学生のみではなく、物理学を専攻した学生が採用されることもある。

企業側のメリット

産学連携教育を長期的に継続・普及させるためには、協力する企業側に、何らかのメリットがあることが重要である。そのような企業側のメリットについて、「メリットがない」という意見を先に示したが、中には、積極的にメリットを見出している企業もある。以下には、そのような積極的な意見を紹介する。

産学連携教育に取り組む企業側のメリット

  • 企業側としては、若手社員の参画によるスキルと意識の向上、知名度の向上など、ある程度採算を度外視しても得られるものは非常に大きく、弊社としては今後も積極的に取り組んでいきたい内容だと考えています。
  • 弊社では、産学連携講座の講師になると、社外貢献として人事考課ではプラスに評価されるが、昇給など即効性のある便益には直結しない。体力的に大変であっても、「面白い」、「自分のためになる」、「大学で教えられる」、「日常の業務では得られない緊張感が得られる」などが、社員が講師活動を続ける際の動機付けになっているようである。
  • 産学連携は、企業側にとってもメリットのあるものにすることができる。例えば、大学で得た開発成果を、ビジネスに活用することもできるのではないか。ただし、現時点では、学生の知識・スキルが不足しているため、ビジネスに活用できるような成果は得られていない。まずは、教育訓練を重ねることで、学生の質を高めることが大切だと思う。
  • 非常勤講師であっても、大学の講師という肩書きが、営業などの際に非常に有効である。また、大学と協同で何かに取り組んでいるという事実そのものが、企業のPRになる。
  • 非常勤講師というメリットの価値を、まだ十分に認識していない企業が多いと感じる。
  • 事業については、自社の役員も認めてくれている。弊社は、複数の大学で産学連携教育に協力しているほか、自分自身も、複数の大学で客員教授や非常勤講師・委員を務めている。上席が評価してくれているのは、このような活動が会社の広報になっているとの認識があるからである。

産学連携教育の継続・普及に向けた提案

産学連携教育を継続・普及させるために必要な具体策に関しても、企業側関係者からは様々な意見が寄せられた。

産学連携教育の普及・促進に向けた提案

  • 企業が大学に講師を派遣する代わりに、大学には、夜間講座などの形で中小企業の人材育成を担ってもらいたい。中小企業では、人材育成に多額の投資をすることは難しい。
  • 地元企業は、大学に対して社会人教育へのニーズがある。大学には研究施設を提供してもらうだけではなく、研修の実施も期待している。地元のIT企業は基盤が脆弱で、受講のための費用を捻出できない。働くことが最優先であり、教育にかけるゆとりがないのが実状である。
  • これまで、企業が大学教育について半ばあきらめ、何も主張をしてこなかったのも、大学教育の改革が進まなかった原因の一つである。また、社員が大学で教えるということを企業が評価しなければ、産学連携は進まないので、大学で教えるというキャリアパスを企業が認める(さらには奨励する)ような仕組みも必要である。企業は、産学連携を社会貢献として考えるべきである。
  • 講座すべてに協力するのではなく、大学の講座の中での節目として、スポット的に協力するのであれば、企業側にとっても負担が軽く、協力しやすい。
  • 大学院生等を企業に派遣して、例えば、企業で不足している要素技術について、学生が講義を行う等、大学のシンクタンク化(ヘルプデスク化)による連携の有り方を検討している。

産学協同事業に取り組んだ感想から

企業関係者に対するアンケートでは、産学協同事業に取り組んだ感想を自由記入する形式をとった。記入された感想は、事業で得られた成果に関するものから、産学連携教育の普及に関する提案に至るまで様々であるが、以下に、それらの一部を紹介する。

産学協同事業に取り組んだ感想(企業関係者アンケートから)

  • 今回参画してみて、学生のみなさんにとっては社会人と直に接する希少かつ貴重な経験であり、教育内容そのものも大事ですが、教育の中での経験や、その間に接する社会人から感じ取る職業観というものを大切にしていただきたいと思います。これらは、どのような企業に入ったとしても、彼らにとっての財産になることは間違いないと思います。
  • 現在、IT企業は、新卒者にとっては不人気業種に位置付けられており、人材確保はIT企業にとって死活問題となっている。そんな状況下にあって、産学協同での実践教育は、企業側にとっては、IT企業の仕事の魅力を伝え、企業の存在をアピールする格好の場になると考える。経営的に考えれば、これは人材確保のための投資であり、本来は企業の自助努力として取り組むべきものであろう。しかしながら、実際に産学協同実践教育に取り組んでみた率直な感想としては、講師の確保、時間の捻出は極めて困難であり、講師を出す現場の責任者にとっても、大きな負担となってしまう。体力の乏しい企業にとっては、投資したくても投資できない(お金の問題ではなく人材の問題)というのが実状であろう。
  • 採用のタイミングでしか関係の薄かった産業界と大学が、今回のような取り組みを通して、企業側講師が学生、教員を教え、教員が企業の社員を教えるなどの、お互いが補完しあえる流れの第一歩ができたことは非常に素晴らしいと感じている。この交流を更に発展させ、大学及び企業のニーズをリアルに把握し、そのニーズに対応していく為には更なる人材交流(出向等も含めた)も必要と考える。参加企業が増えれば、個々の企業ノウハウが大学によって学問化され、そして、その学問が企業に戻ってくるという善循環も期待できる。
  • 産学連携教育は、今や、大学等の教育機関側と産業側の双方にとって最重要な分野であると言い切ることができます。産業界においてリーダーシップを発揮するような人材は、大学等での教育を経て産業界に入るわけですから、大学等の付加価値として、産業界に受け入れられ結果として社会に貢献できる人材を送り出すことであるのは当然と言えます。逆の言い方をすれば、企業にとっては、受け入れた学生を役立つ人材に仕上げるために、現在、巨額な投資をしている(つまり、個別の企業が教育機関としての機能の一部を担っている)わけで、もし、人間としてきちんとしていて、エンジニアや専門家としての基礎力を身に付けた人材を大学等から多数受け入れることができれば、そのまま企業の価値を高められることになります。
  • これまでの産学連携は、企業が講師を派遣して学生に講義をする形態が主流であったように思われる。しかし、産学連携のあり方は地域によって様々。県内では、中小・零細企業が大半を占めており、独自の研究開発を行えないのが実情。中小企業支援の観点からの産学連携もありうる。例えば、大学がシンクタンク、もしくは企業のヘルプデスクとして学生を企業に派遣し、企業側で足りない技術や知識を伝授することもあってよいのではないか? 具体的には、中小IT企業にとって、インターネット技術の急速な高度化、オープンソース化やWEB2.0化の流れの中で、体系的・継続的に技術を習得することは、時間的制約の中でむしろ学生以上に困難をきわめ、新しい流れに対応しにくい状況が一層加速している。新しい要素技術については、むしろ学生の方が敏感であり、時間的にも習得しやすい環境にある。ビジネス環境も大きく変化し、新しい技術に依拠したビジネスモデルが多数出現している中、地方の疲弊した地域経済を活性化し、地域内の中小企業の競争力を高めるための大学の役割を明確にした産学連携のあり方として、大学の「ヘルプデスク化」「地域のシンクタンク化」が求められていると思う。従来は、その役割を大学教師が担当していたが、時間的な制約も多く、また、キメの細かな対応は困難であった。企業ニーズにもピンからキリまで様々なので、今後は、むしろ学生を活用し、企業ニーズにこたえる形態=「ヘルプデスク化」を中心に、連携のあり方を考える時期に来ているのではないかと思う。中小企業にとっては、ちょっとした技術的解決があれば、新たなビジネス展開が可能なケースは多数存在する。学生にとっても、企業ニーズを捉え、ベンチャー気質を育てる意味でも有益ではないかと考える。地方には地方の産学連携のあり方がある。
  • 営利企業としては企業認知度向上や社会貢献としての参画は負担が大きい。中国、ベトナム、インドなど国家政策で産学連携を推進しIT人材を育成するなか、日本はまだまだ出遅れていると感じている。今後のグローバル対応を進める中、管轄官庁の支援の強化継続をお願いしたい。
  • 今回の事業に参画することにより大学の現状と学生の優秀さがわかった。今後の継続については、メリットとコストのバランスを考えると、現実的には企業だけでは非常に困難だと思う。これからの日本産業を支える組込み事業の推進するためにも、今後も国の事業として継続していただきたい。また、今回の事業にプラスして、学生だけではなく、地域地場企業の社員も参加できる講座の実施についての補助も検討していただければ、地域の活性化となり、結果として日本全体の経済活性化になると思う。