3つのコアスキル指標による新IT人材育成プログラム(概要)

事業実施体制

代表機関 福島県立会津大学
申請代表者名 杉八合 勲(会津大学 産学イノベーションセンター 客員教授)

※機関名・役職等は当時(平成15年度:事業採択時)のもの

 

連携機関

機関名 役割
NTTコミュニケーションズ(株) コースの開発、教材開発、コース運営、評価および報告書作成支援
(株) T&Fカンパニー 教材開発、コース運営、評価、報告書作成支援および受講者のインターンシップの受け入れ
(株) ナディス 同上

 

協力機関

機関名 役割
会津若松市 広報

 

背景と目的

創立11年の会津大学では、創立よりITベンチャー企業を起業する人材を継続的に輩出し、地域のITソリューションの一翼を担っている。また、産学連携による研究も推進され、会津地域にはIT産業が根付いてきた。しかし、今後の継続的な発展のためには、次のような課題に対する取り組みが必要である。
① 実践的スキルの履修の必要性
会津大学は、コンピュータサイエンスの専門大学であり、コンピュータサイエンスを学ぶための基礎から応用までの幅広い分野をカバーしているが、企業が求める実践的なスキルが大学カリキュラムの履修のみでは不足している。
② IT分野のソリューションビジネスにおけるスキルの必要性
製造・保守工程を実施しているため、そのスキル中心に身に付いているが、企画・設計工程等ソリューションビジネスに必要なスキルが不十分になっている。
③ 会津地域におけるIT人材育成の環境の必要性
IT系志望者は、地元のITスキルアップの講習会などで学習している。しかし、実際は一般的なアプリケーションの習得が中心で、IT人材として企業が求めるスキルに到達しておらず、業種転換がうまく機能していないのが現状である。
上のような問題意識をふまえ、本事業では、会津大学が、技術専門の教育のみならず、ビジネス社会におけるIT人材を育成するために、3つのコアスキル(社会的知性、ビジネススキル、テクニカルスキル)を評価の軸とする人材育成システムを開発し、ITスキル標準の有効性及び評価方法について探求した。ここで、3つのコアスキルとは、ヒューマンスキルと、行動特性(EQ検査などで判定)を併せて評価した社会的知性、職種に関係なく必要なビジネススキルと、職種に応じたテクニカルスキルを指す。

 

産学協同による教育訓練の意義

本事業には、会津大学の卒業生や現役生が在籍する企業が参画した。これによって、会津大学に不足しているカリキュラムや教育方法を、学生の立場から提示することができた。また、グローバルな視点を取り入れた企業とともに、部分的なスキルでなく、総合的なスキルを育成するカリキュラムや教材、評価の方法を作成することができた。

 

教育訓練の概要

教育訓練の概要

本教育訓練事業はITスペシャリストコース、セールスコースの2コースから構成されている。コースは、各20講座(約140時間)である。座学やグループワーク、ケーススタディ、eラーニングなどを用いた集合研修と、受講後に実践力を養うためのインターンシップやOJTで構成されている。

①ITスペシャリストコース
本コースは、プロジェクトメンバーと良い関係を築き、メンバーからの指示や仕様書を適切に理解できるほか、プロジェクトメンバーの一員として受け持ったタスクを確実に実施する能力を有し、実務を全うできるIT人材の育成に主眼が置かれている。コミュニケーションなどの社会的知性やビジネススキルの他に、プロジェクトマネジメントやUMLなどのスキルを育成する。

②セールスコース
本コースは、顧客との良き関係を築き、相手のニーズをよく理解した上で、具体的なソリューションの提案を自分の言葉や文章で的確に表現し、チームまたは単独で顧客に対するセールス活動を完遂できる能力を有した人材の育成に主眼が置かれている。コミュニケーションなどの社会的知性やビジネススキルの他に、実践型マーケティングや提案型プレゼンテーションなどのスキルを育成する。

受講者

ITスペシャリストコースの受講者は、会津大学生全体であるが、特に会津大学授業の中でプログラムなど専門的な科目が増え、本プログラムの講義内容に興味を持ち始める2年生、就職活動を意識しはじめる3年生や、IT企業への転職や現在業務でIT関連の職種の社会人を対象とした。転職希望者の条件として、最低限のコンピュータのプログラム等を勉強していることとした。(計14名)
セールスコースの受講者は、ITスペシャリストの受講対象人材に加え、企画・設計工程、マーケティングやコンサルティング業務に興味がある学生も対象とした。学年は、2・3年生を中心とした。社会人では、IT・コンピュータ関連企業に勤めている人で現在または今後企画・設計工程を行っていく方や転職を希望する方を対象とした。(計13名)

受講者情報詳細
◆ITスペシャリストコース
受講者特性等
会津大学生12名、社会人2名となった。
当初対象としていた層に比べて、院生など幅の広い受講者となった。
人数
会津大学 1年
2年
3年
4年
大学院生
2
5
1
1
3
社会人 2
合計 14
◆セールスコース
受講者特性等
会津大学生9名、社会人4名となった。
人数
会津大学 2年
3年
大学院生
4
4
1
社会人 4
合計 13

教育効果の測定方法等

3つのコアスキル指標とその個別のスキル指標を作成し、テストや講師によって評価した。また、インターンシップ・OJTを行い、実際の業務を行い、知識だけでなく実際の行動として発揮されているかについても評価を実施した。

 

事業実施年度(平成15年度)における成果

今回、ITスキル標準のスキル項目を参考にレベルの明確化・詳細化・精密化を心がけたことで、充実したカリキュラムを設定し、若年層の人材育成にマッチした教育訓練事業として、大きく貢献したと考えられる。
今回の訓練の有効性の仮説において、ITスペシャリストコースでは、2つのコアスキルで5段階評価の3以上となった受講者が75%、3つのコアスキルすべてで3以上となった受講者が50%という結果となり、十分有効であったと言える。またセールスコースでは、2つのコアスキルで5段階評価の3以上となった受講者が30%という結果になった。
事業全体を通して、コンピュータ理工系専門大学である会津大学において、不足しがちな社会的知性、ビジネススキル、実践社会で必要となるテクニカルスキルを習得した受講者を多く輩出できたことは、今回の大きな成果のひとつといえる。

 

現在(平成18年度)の事業継続状況

会津大学では、本事業実施以前より、会津若松市内のベンチャー企業支援を目的とする「ナレッジビジネススクール」に協賛(平成17年度まで)し、事業実施年度(平成15年度)からは、会津大学独自で「実戦ビジネススクール」を運営(平成15年度)した。しかし、本事業と同様の内容の講座については、主担当であった教員が退職をしたため、継続的に実施することが困難であった。単位認定についての十分な議論が行われなかったということも、継続に至らなかった理由の一つである。
一方で、本事業の連携企業であった会津大学発ベンチャー企業を中心とする数社が、長期インターンシップや実践的IT教育訓練を実施している。これにより、本学の学生は、大学在学中から、実践的なIT技術を修得し、それを実践することが可能となっている。また、本学では、産業界の人材を教員として積極的に雇用している他、IT業界で著名な方を招く講座を開設している。