高度IT人材のための産学協同教育フレームワーク開発(概要)

高度IT人材のための産学協同教育フレームワーク開発(概要)

この事例は、特色事例を紹介した:注目事例でも取り上げられています。

事業実施体制

実施代表機関 国立大学法人 北海道大学
提案代表者名 嘉数侑昇(北海道大学 大学院 情報科学研究科 教授)
教育訓練システム
導入・展開責任者
大内 東(北海道大学 大学院 情報科学研究科 教授)

※機関名・役職等は当時(平成16年度:事業採択時)のもの

 

連携機関

機関名 役割
新 日鉄ソリューションズ(株)、(株)日立製作所、富士通(株)、日本アイ・ビー・エム(株)、(株)日本システムディベロップメント、日本 ヒューレット・パッカード(株)、(株)アルゴ21、ソフトバンクBB(株)、日本オラクル(株)、サン・マイクロシステムズ(株)、日本電気 (株)、マイクロソフト(株)、住商情報システム(株)、NECソフト(株)、(株)情報科学センター、日立ソフトウェアエンジニアリング(株)、札 幌総合情報センター(株)、(株)エヌ・ティ・ティ・ドコモ、エヌ・ティ・ティ・コムウェア北海道(株)、日本ユニシス(株) 特論・演習講師、
教育フレームワーク
検討委員

 

事業実施体制

C216

背景と目的

情報技術の強化、特にその核である、ソフトウェア研究開発技術とシステム構築技術の強化の鍵は、人材育成にある。しかしながら、IT人材育成の責務を担っている大学のIT教育・研究の実態は、我が国の産業界の期待とは大きく乖離している。
こ のような状況の中、産業界のニーズに即した技術を有し、かつ新たな研究・技術のシーズを創造できるIT人材の育成が急務とされている。また、要素技術の教 育のみならず、課題解決能力の向上を中心とした教育が必要であり、そのためには、学と産との連続性、課題指向型や実践ベースの教育方法、国際的活動への貢 献などが、大学での実践的IT教育に必要とされている。
しかしながら、現状の大学でのIT教育においては、ハードウェア、ソフトウェア、そして開 発経験の豊富な教員といった環境が十分とは言えない。また、一部の大学では、スポット的なテーマ授業で外部の講師を招聘することも見受けられるが、体系的 に構成された授業はまだ確立されていない。高度IT人材育成においては、産学が密に協力する体制のもと人・モノ・フィールドを共有する新しい教育環境が必 要である。
本事業では、上記の背景・問題意識を踏まえて、これまで北海道大学が進めてきた、産学連携講座(実ソフトウェア開発工学講座およびオー プンシステム工学講座)を土台に、北海道大学と複数のIT企業による産学協同体制によって、高度な技術知識を有し、実システム/ソフトウェアの開発が実践 できる人材育成のための実践的IT教育フレームワークを設計・開発した。上記のような人材は、ますます大規模・複雑化する情報システム、オープンソース、 Webサービスなどにおいて、その不足が懸念されている。
また、上記の教育フレームワークに沿った教育訓練を実施し、受講生評価等によって、教育訓練の有効性を実証した。

 

産学協同による教育訓練の意義

本 事業では、産学協同で寄附講座を実施している北海道大学が有する経験データを分析し、その結果を反映させて、寄附講座の特論・演習、集中研修、インター シップについて、更に体系化・充実させた教育フレームワークを再構築した。大学教員、IT企業講師、学生の参画によって、大学側による高度なIT理論教育 と、IT企業側の現役の技術者による高度なIT実践技術教育を有機的に結合した教育フレームワークが構築されたと言える。

 

教育訓練の概要

教育訓練内容

本 教育訓練では、産学協同で開設している既存の寄附講座の経験データを分析し、その結果を反映させて、以下の3つの連携性の高いプログラムから構成される教 育フレームワークを設計するとともに、これらの実施に一貫性を持たせるため、教育実施過程でのインプロセスな評価を可能にする評価手法の設計を行った。具 体的には、学生と講師の双方向での情報交換と、学生の習熟度あるいは講師の教え方の評価を可能にすることで、習得技術と教育手法を互いに向上させるもので ある。つまり、即時的な双方向フィードバックを行うことで、受講生と講師の融合環境を実現する新しい創発的ITトップガン育成システムである。

オープンシステム工学特論・演習

オープンシステムの基盤として実用に供されているソフトウェア製品技術をテーマとして、講義と演習により、実際のソフトウェア開発およびシステム開発に必要なIT要素技術を学んだ。

集中研修

特論・演習で習得した知識と技術の深堀として、プレゼンテーション、ディスカッション、演習を通して、スキルレベルのアップを行った。

インターンシップ

受講生を企業で行われている実プロジェクトに参加させ、一流技術者の指導の下で開発経験を積ませた。

創発的ITトップガン育成評価手法

授業に参加する学生と企業講師とのコミュニケーション、及び習熟度評価・分析、授業内容とその方法についての評価・分析を行うための評価手法を設計した。
本事業では、開発した教育フレームワークのうち、「オープンシステム工学特論・演習」について、教育訓練を実施し、創発的ITトップガン育成評価手法の検証を行った。

教育訓練方式

教 育訓練方式としては、連続した座学と実習の組合せによるカリキュラムを採用した。内容は、ソフトウェア製品開発を対象としており、既にオープンシステムの 基盤として実用に供されているソフトウェア製品技術の講義と演習を通して、実践的なソフトウェア開発およびシステム開発に必要な前提技術を理解させること により、一流のソフトウェア開発をリードできる人材となるため技術的な素養を身に付けた。

有効性評価

有 効性評価としては、創発的ITトップガン育成評価手法を適用して、教員によるパーソナリティを含めた評価、企業講師による評価といった多角的な視点での評 価を行うとともに、受講生に対してアンケート調査等を実施し、教育訓練の有効性を評価した。また、このような新しい創発型の教育手法を模索するためのデー タ収集も行い、結果を公表した。

受講者

本教育訓練は、北海道大学大学院情報科学研究科の修士1・2年の計37名を対象とした。

受講者情報詳細
コース名 受講者の前提等 人数
オープンシステム
工学特論コース
主たる受講者は、北海道大学大学院情報科学研究科複合情報学専攻に所属する院生であり、受講以前に学部の講義・演習で本授業に関連する以下について修得していることを前提としている。
・情報理論基礎
・計算機アーキテクチャ
・データ構造とアルゴリズム
・C言語によるプログラミング
37名
(受講登録者)
オープンシステム
工学技術テーマ
演習コース
本コースの受講は、オープンシステム工学特論コースを受講していることが前提となる。受講者および想定したレベルについては、オープンシステム工学特論コースと同様である。ただし、演習テーマによっては、より実践的なレベルのプログラミングスキルが求められる。 21名
オープンシステム
工学
共通演習コース
本 コースの受講は、オープンシステム工学特論コースおよびオープンシステム工学技術テーマ演習コースを受講していることが前提となる。受講者および想定した レベルについてはオープンシステム工学技術テーマ演習コースと同様である。ただし、選択する共通演習テーマによっては、前期に実施した「実ソフトウェア開 発工学演習」のPBLに参加していることが前提となる。
また、本コースの受講は、数週~数ヶ月に亘るグループ単位のPBL形式を取るため、テーマとして扱う技術群について、より高いレベルでの修得を目指すモチベーションを持つ者に限定される。
8名

 

教材・インストラクタ・環境

本教育訓練では、IT企業の一流技術者である講師が準備する演習教材を使用し、サーバ機とノートPC(受講生一人に一台)を用いる演習環境を整えた。
また、インストラクタとしては、テーマ毎に複数のIT企業の第一線で活躍している異なる技術者が参画した。

 

事業実施年度(平成16年度)における成果

今回実施した「オープンシステム工学特論・演習」では、学生の習熟度の向上が確認され、企業講師による体系的な新しい実践的教育の効果を実証することができた。
ま た、IT教育フレームワーク検討委員会における成果として、現在と将来のIT産業に求められる技術者の人材像を、産学で具体的に共有し、大学・大学院が担 うべきIT教育の在り方と連携企業との教育環境の融合の在り方を明確にすることができた。その概要は以下のとおりである。

  1. カリキュラム教育の見直し
    -多様化する情報技術に対する高い習熟教育
    -知の構造に基づく授業構成
  2. 個人の能力を伸ばす人材育成
    -人材像の提示
    -モチベーションと達成感のある個人向け教育
    -ある種のチューターシステム
  3. 相互評価システムの導入
    -個人のスキルベクトルを可視化(主客両面の評価)
    -授業コンテンツの改善
    -インプロセスに評価
  4. 場とチャンスの提供
    -インターンシップ、プロジェクト
    -実フィールド、国際的活動

 

現在(平成18年度)の事業継続状況

現 在は、昨年度に引き続き、実ソフトウェア開発工学特論・演習を実施している。特論では、プロジェクトマネジメントや品質保証といった、特にプロジェクトの 運営に関わる項目を、企業から招いた講師に講義と演習をしていただいている。演習の延長としての共通演習では、PBLを実施し、要件定義からリリースまで の一連のプロジェクトを一通り体験する。昨年と同じく、夏季・春季には集中研修を実施し、後期にはオープンシステム工学特論・演習を実施する。この特論・ 演習では、ITシステム構築に係わる個別要素技術の深い理解と、そのシステムへの応用の習得を目的としている。さらに、前期と同様に共通演習でPBLを実 施し、昨年と同じく成果物をソフトウェアデザイン部門の大会に出品予定である。
なお、現在では、事業開始時より参画企業が増加し、計21社が寄附企業となっている。各特論や集中研修等では寄附企業に講師を依頼し、技術者を講師として派遣していただいている。