情報サービス・ソフトウェア産業の現状

情報サービス・ソフトウェア産業の動向

ここでは、「情報サービス・ソフトウェア産業」の動向についての情報を掲載する。

まずは、「情報サービス・ソフトウェア産業」を、「情報サービス産業」と「組込みソフトウェア産業」に分け、それぞれの産業の市場規模や産業人口数等、基本的な動向を紹介する。

情報サービス産業の動向

市場規模と産業人口

下図は、「情報サービス産業」の年間売上高と従業者数の推移を示すデータである。情報サービス産業は、1970年代から急速な発展を遂げている。その成長は、一時は落ち込みを見せたものの、現在では、年間売上高 約14.6兆円を記録し、従事者 約54万人を抱える産業へと発展した。

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情報サービス産業の年間売上高と従業員数の推移
(経済産業省「平成17年度特定サービス産業実態調査:情報サービス業編」)

参考までに、上図に、国勢調査による「情報処理技術者」数の推移を併せて示した。国勢調査によれば、国内の「情報処理技術者」の数は、狭義の情報サービス産業の従業者数を大きく上回っている。これは、社会におけるITの活用が進むにつれ、ITに関する技術者が全産業で増加している事実を示しているとみられる。ITを活用するための人材として、これらの人材も含むとすれば、広義の情報サービス産業の産業人口は、約85万人と考えることもできる。
なお、平成17年度の国勢調査では、「システムエンジニア」が77万3,600人、「プログラマ」が7万5,900人となっており、この2つの職業が、国内の「技術者」の最多数(約3割)を占めている(下図では、「システムエンジニア」と「プログラマ」を併せて「情報処理技術者」としている)。

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平成17年度国勢調査における「技術者」の種類と割合
(総務省統計局資料より作成)

情報サービス産業の国内全体の市場における相対的な規模を次に示す。 下図は、狭義の情報サービス産業(特定サービス産業実態調査等が対象とする情報サービス業)よりも広い産業を含む「情報通信産業」の産業規模が、国内総生産に占める割合である(「情報通信産業」の範囲については、後の図参照)。広範な情報関連産業を含む「情報通信産業」は、現在、国内総生産の2割にも相当する主要産業として位置づけられるが、情報サービス産業を狭義で捉えても、その「情報通信産業」の中で、1割以上の市場規模を有する重要産業として位置づけられる。

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情報サービス産業の市場規模
(国内総生産:内閣府「平成17年度国民経済計算確報」)
(情報通信産業 国内総生産:総務省「平成18年度版 情報通信白書」)
(情報サービス産業:経済産業省「平成17年度特定サービス産業実態調査:情報サービス業編」)

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【参考】情報通信白書における「情報通信産業」の範囲
(総務省「平成18年度版 情報通信白書」)
※「情報通信産業」には、日本標準産業分類上の「情報通信業」よりも広範な産業が含まれる。
 上図の青色網掛け部分が、上図の「情報通信業」に相当すると考えられる。

 

また、雇用者数・従業者数のデータから産業人口を見ると、「情報通信産業」の雇用者数は、国内全産業従業者の7.3%にも相当する。わが国の経済に大きな影響を持つ自動車関連産業が“一割産業”などと言われ、国内全従事者の約1割が従事していることを考えると、7.3%という数字は決して小さくない。この数字には、情報に関連する産業の社会的な位置づけが示されている。
狭義の情報サービス産業の従事者数は、その「情報通信産業」全体の15.1%にも相当する。情報サービス産業を狭義で捉えても、比較的大きな割合を占めていることが分かる。

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情報サービス産業の産業人口規模
(全産業従事者:総務省「平成16年 事業所・企業統計調査」)
(情報通信産業 雇用者数:総務省「平成18年度版 情報通信白書」)
(情報サービス産業:経済産業省「平成17年度特定サービス産業実態調査:情報サービス業編」)

参考までに、自動車関連産業における自動車製造部門の就業人口は、約75万人1となっているが、これは、国勢調査による「システムエンジニア」の数(約77万人)と、ほぼ等しい。ここからも、ITに関連する産業としての広義の情報サービス産業とその産業人口の大きさを見ることができる。

情報サービス産業が社会に与える影響

ここまで、情報サービス産業が社会に与える影響を、市場規模と産業人口の面から見てきた。次に、情報サービス産業が製品・サービスを提供する先である顧客の産業から、情報サービス産業が社会に与える影響を把握する。

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情報サービス産業の契約先産業別の年間売上高
(経済産業省「平成17年度特定サービス産業実態調査:情報サービス業編」)

情報サービス産業における顧客は多様である。上図は、「情報サービス業」の契約先を産業別に分類したものであるが、「製造業」を始めとして、「金融・保険業」、「公務」(官公庁関連)、「卸売・小売業」など、情報サービス産業は、多様な産業に対して、製品やサービスを提供している。
情報サービス産業は、他産業でのIT化の促進において重要な役割を担っているため、わが国の産業全体の生産性向上の鍵を握っているとも言われる。特に、上図にも示されているように、国内において比較的産業規模の大きな製造業や金融・保険業とのつながりは強い。情報サービス・ソフトウェア産業は、わが国の経済活動や、そこから生み出される国際競争力を支える基盤として、きわめて重要な役割を担っている。


1 社団法人日本自動車工業会ホームページ(http://www.jama.or.jp/industry/industry/industry_1g1.html


 

組込みソフトウェア産業の動向

組込みソフトウェアは、現在では、あらゆる製品・機器に組み込まれており、その中枢となる制御機能等を担っている。しかし、組み込まれる製品・機器が多様な産業に分布しているため、従来、「組込みソフトウェア産業」について、独自の産業として、市場規模や産業人口を把握することは困難であった。このような状況の中、近年、組込みソフトウェアの重要性に対する認識が徐々に高まり、2004年から、経済産業省によって「組込みソフトウェア産業実態調査」が始まった。その統計によれば、2004年から2006年までの「組込みソフトウェア産業」の規模・産業人口の推移は、以下のとおりとなっている。

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組込みソフトウェア産業規模と技術者数の推移と予測
(経済産業省「組込みソフトウェア産業実態調査報告書」2004・2005・2006年版を元に、みずほ情報総研作成)
※ 2007~2010年の予測値は、開発規模・技術者数とも、年率10.0%で成長すると仮定した場合。
(2004~2006年の間の年間成長率の平均は、開発規模13.5%、技術者数16.9%)

上図では、2004~2006年の調査結果とともに、予測値を示している。この予測値は、過去の実績より低めに見積もっているが、それでも、年率10.0%で成長した場合、2010年には、開発規模・技術者数とも、現在の2倍程度に達すると見込まれる。「組込みソフトウェア産業」は、今後、その重要性に対する認識の高まりとともに、大きく成長する可能性を持った産業であると言えるだろう。

なお、上図では、「組込みソフトウェア産業」の規模は、まだそれほど大きくないように見えるが、組込みソフトウェアが組み込まれている製品の多様性(下図)を考慮すると、その影響力は、産業の規模以上に大きいと考えられる。

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組込み製品開発の事業分野
(経済産業省「2006年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書-経営者・事業責任者向け調査-」)

上図では、特に、「工業制御/FA機器/産業機器」の割合が高くなっている。他産業の生産性を左右するこれらの機器に対して、組込みソフトウェアは非常に重要な役割を果たしている。このような、他産業における組込みソフトウェアの重要性を考慮すると、「組込みソフトウェア産業」も、「情報サービス産業」と同じく、他産業を支える基盤産業となっていることが分かる。
このような組込みソフトウェアの重要性を、ハードウェアもソフトウェアも含む「組込みシステム」という観点から捉えた場合の産業規模や従業員数を示したものが、次図である。これを見ると、組込みソフトウェアを含む組込みシステムの開発規模は、国内総生産の1割を超えている。また、組込みシステムに関連する企業の従業員数をすべて合算すると、全産業従事者の1割近くに達する。組込みソフトウェアを含む組込みシステムの影響範囲は、先に見た「情報通信産業」と同じくらい、広範囲にわたっている。

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組込みシステム関連産業規模・従業員数
(経済産業省「2006年版 組込みソフトウェア産業実態調査報告書-経営者・事業責任者向け調査-」)
※ 上記報告書では、以下の業種を「組込みシステム関連産業」として従業員数を推定している。
製造業:一般機械器具製造業、電気機械器具製造業、情報通信機械器具製造業、電子部品・デバイス製造業、輸送用機械器具製造業、精密機械器具製造業、その他の製造業
情報通信業:情報サービス業

 

情報サービス・ソフトウェア産業の課題

先に述べたように、情報サービス・ソフトウェア産業は、わが国の経済・社会を支える基盤産業となっている。しかしながら、この産業の現状に関しては、いくつかの課題も指摘されている。現在、これらの課題の解決に向けて、産学協同による実践的なIT教育などの取り組みが実施されているが、ここでは、そのような取り組みの前提となっているこれらの課題を概観する。

成熟期を迎えた情報サービス・ソフトウェア産業

急成長から安定成長へ

1970年代から、目覚しい発展を遂げた情報サービス・ソフトウェア産業は、成熟期を迎えつつある。
次図は、「情報サービス産業の年間売上高と従業員数の推移」の年間売上高の成長率の変化を示しているが、これを見ると、ここ数年の成長率の伸びは、数十%の急成長を見せた1970~1990年代と比較すると、やや落ち着く傾向にある。特に、近年の成長率には、劇的な変化がないため、情報サービス・ソフトウェア産業が成熟期を迎えたとの見方が強まっている。

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情報サービス産業の売上高成長率(前年比)の推移
(経済産業省「平成17年度特定サービス産業実態調査:情報サービス業編」を元に、みずほ情報総研作成)
※ 図中の直線は、参考までに示した、売上高の変化の傾向を示す線形近似曲線(R2 = 0.2352)である。

また、情報サービス企業の売上高営業利益率を見ても、近年、低下傾向にあることが分かる。2006年には、若干回復する気配を見せているが、それでも4%台に留まっており、2000年の水準には及ばない。
このように、現在の情報サービス・ソフトウェア産業は、成熟期を迎えたとの見方もあり、その成長率の鈍化や収益率の低下を打開するため方策を打ち出すことが課題となっている。

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情報サービス産業の売上高営業利益率の推移
((社)情報サービス産業協会「情報サービス産業基本統計調査」2000~2006年)

 

市場の成熟

情報サービス・ソフトウェア産業が抱える課題の背景として、「産業自身の業務形態」と「市場の成熟」が指摘されている。
次図は、情報サービス産業の業務の種類を示しているが、最も高い割合を占めているのは、「受託ソフトウェア開発」となっている。これは、顧客であるユーザー企業から、ソフトウェア開発を受託する業務であるが、この業務は、ユーザー企業が属する産業の動向や、個々の企業のIT活用(情報化投資)に対する積極性に、大きく左右されることが大きい。

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情報サービス産業の業務種類別の年間売上高
(経済産業省「平成17年度特定サービス産業実態調査:情報サービス業編」)

また、次図は、情報サービス企業の業況に影響を与える要因を示すものであるが、ここからも、ユーザー企業の情報化投資規模や、ユーザー企業自身の業績の変化が、情報サービス企業に大きな影響を与えていることが分かる。つまり、受託ソフトウェア開発を最大の業務としている情報サービス産業には、発注元である顧客企業の意向や顧客側産業の動向によって左右される要素が大きい。そのため、顧客側の情報化投資が一巡する、顧客側産業の業況が悪化する、などの事態が発生すれば、情報サービス産業は、大きな影響を受けることになる。

 

C111-1-14情報サービス企業の業況に影響を与える最も強く影響を与える要因
((社)情報サービス産業協会「情報サービス産業白書2006」)

以上の点をふまえると、受託ソフトウェア開発を最大の業務とする情報サービス産業の今後の成長のために重要な鍵を握るのは、ユーザー企業の情報化投資(IT投資)規模の拡大である。しかし、この点を楽観的に捉えるのは難しいとの見方もある点に留意しなければならない。2010年までのIT投資の成長率予測から、IT投資の成長率が低下傾向にあるとの報告があり、市場の飛躍的な成長に大きな期待を寄せることは難しい。また、このようなIT投資の成長率の低下は、一過性の減少ではなく、先進国に共通して見られる現象であると考えられている。

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各国別のIT投資の規模と成長率
(World Information Technology and Services Alliance「DIGITAL PLANET 2006」を元に、みずほ情報総研作成)

これまでにみたように、情報サービス・ソフトウェア産業は、現在、成熟した市場・環境の中で、さらなる飛躍を求められており、これが、産業にとっての第一の課題となっている。

基盤産業として問われる存在感

情報サービス・ソフトウェア産業の第二の課題は、「基盤産業としての存在感の確立」である。 わが国の経済・社会を支える基盤産業として、情報サービス・ソフトウェア産業は、年々、その重要性を増しているが、その重要性に比べて、産業としての“存在感”が確立されていないとの見方は多い。 この“存在感”は、一般市民に対する製品・サービスの認知度や、その産業の国際競争力等と強く依存すると考えられるが、情報サービス・ソフトウェア産業は、わが国の経済・社会に対して担っている重要性の割に、一般市民の間での製品・サービスの認知度や、国際的な競争力が低く、産業の“存在感”を示せているとは言うことは難しい状況にある。

この背景には、受託ソフトウェア開発が業務全体に占める割合が高いこの産業では、個人顧客ではなく法人顧客を主体とするケースが多いという事実や、受託ソフトウェア開発志向が強く、世界的に大きなシェアを獲得できるようなパッケージソフトの開発には、十分に成功していないという事実がある。次図に示されているように、世界的に広く利用されているパッケージソフトウェアの多くは海外製である。国内のソフトウェア市場においても、日本の情報サービス・ソフトウェア企業は、著名なソフトウェアの製造元としては、あまり認知度が高くないことが多い。

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パッケージソフトウェアの世界シェア
(経済産業省・厚生労働省・文部科学省編「2005年版 ものづくり白書」)

 

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主要なソフトウェアの国内シェア
(クライアントOS・サーバーOS:産業構造審議会 情報経済分科会 情報サービス・ソフトウェア小委員会第1回 人材育成ワーキンググループ資料)

参考までに、ソフトウェアのシェアに比べて、国際競争力があるとされている製品について見てみると、自動車や産業車両、液晶テレビ、ビデオカメラなどは、世界の市場に占める日本企業のシェアが大きく、日本企業が市場に対して有する存在感も大きい。このような製造業の存在感と比較すると、情報サービス・ソフトウェア産業が有する存在感については、未だ向上の余地が大きいと言える。

また、ソフトウェアの国際競争力の現状を示すデータとして、次の輸出入統計がしばしば用いられるが、このデータによれば、ソフトウェアは、そもそも輸入超過の状態にあることが分かる。世界市場においては、日本の情報サービス・ソフトウェア産業は、海外に優れた製品を輸出するような供給者側ではなく、どちらかと言えば、海外の優れたソフトウェア製品を利用する側に立っている。

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ソフトウェアの輸出入実績
((社)電子情報技術産業協会、(社)日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会、(社)情報サービス産業協会
「2005年コンピュータソフトウェア分野における海外取引および外国人就労に関する実態調査」)

このような世界市場における存在感の差は、世界のブランドランキングなどには顕著に表れている。日本のブランドで国際的に認知されているのは、主に自動車メーカーであるが、米国企業では、MicrosoftやIBM、Intelを始めとするIT関係の企業が多い。この事実には、米国IT企業の存在感が示されている。

過去、ソフトウェアよりもハードウェアが重要であった時代には、国内市場でも、技術力を有する米国企業に伍して、日本企業が大きな存在感を誇っていた。しかし、今や「技術力がある企業」としても、ITに関して「国際競争力がある企業」としても、残念ながら、日本発のIT関連企業の名前が挙げられることは少ない。国際的な競争力があるIT企業として挙げられる企業は、海外発の外資系企業等であることが多い。

以上を踏まえると、「情報サービス・ソフトウェア産業」が、産業としての”存在感”を高めるためには、 この産業の重要性や社会的役割を示すとともに、産業としての国際競争力の強化に向けた積極的な取り組みが必要であると言えるだろう。

組込みソフトウェア産業における課題

情報サービス・ソフトウェア産業のうち、組込みソフトウェア産業においては、情報サービス産業とは別の課題が存在する。
組込みソフトウェアの開発に関しては、近年、開発規模が飛躍的に増加する傾向にあるにもかかわらず、開発のための期間が短期化していることが、課題として認識されている。
次図は、組込みソフトウェア開発を手掛ける企業の課題を示したデータであるが、このうち最も回答が多かったのは、「開発期間の短期化への対応」であった。
また、続いて「ハードとソフトの両方を熟知した人材の確保」が挙げられており、これも、重要な課題となっていることが分かる。参考までに、後ろに、組込みソフトウェア開発を手掛ける企業にとっての課題が挙げられているが、ここでも、回答の最上位は「人材の確保」となっている。
このような「開発期間の短期化への対応」と、それに伴う「人材の確保」は、現在、組込みソフトウェア産業における重要課題となっている。

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組込みソフトウェア開発における課題
(ソフトウェア産業研究会 「ソフトウェアビジネスの競争力」 中央経済社/平成17年3月)

また、開発期間が短期化し、開発条件が厳しくなる状況の中で、「品質の向上」も、重要な課題として認識されている。
次図は、組込みシステムを搭載した製品の不具合の原因を示すものであるが、「ソフトウェアの不具合」が占める割合は、その他の項目に比べて最も高くなっている。このような現状から、組込みソフトウェアの品質に対する問題意識が高まり、現在では、「品質の向上」も、重要な経営課題として挙げられている。

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製品出荷後に生じた設計品質問題の主な原因の割合
(経済産業省「2005年版組込みソフトウェア産業実態調査:経営者・事業責任者向け調査」平成17年6月)

 

労働環境に関する課題

産業が抱える課題として、労働環境に関する課題も挙げられている。
次図は、ソフトウェア業・情報処理サービス業の労働時間を、他産業と比較したものであるが、このデータからも、これらの産業の労働時間が他産業よりも長いという事実を読み取ることができる。

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ソフトウェア業・情報処理サービス業の年間労働時間
((独)情報処理推進機構「第28回情報処理産業経営実態調査報告書」2006年11月)

しかし、労働時間が長いという事実のみを根拠に、「労働環境が良くない」と結論付けることは難しい。産業に従事する人材が、労働時間が長いという状況に対して、不満やストレスを感じなければ、それが問題となることはない。
しかしながら、業務の忙しさや、それによって個人の自由な時間が確保できないことに対して、産業に従事する多くの技術者を課題と感じていると言われており、そのような結果を示す調査報告等もみられる。情報サービス・ソフトウェア産業に従事する技術者からは、仕事上のプレッシャーが厳しい、ストレスが多い、業務が多忙で疲れる、などといった声も聞かれる。
なお、同じ技術者でも、IT技術者と組込み技術者の間には、課題に感じる項目に差があるとの報告もある。IT技術者は「収入が良くない(収入に不満がある)」点を不満としているのに対して、組込み技術者は「自分の将来に希望が持てない」点に不満を感じているというものである。経済産業省の「IT人材実態調査報告書」などに、これらの調査結果が示されている。
このような労働環境に関する課題は、次の産業の就業人気にも影響を与える課題として、認識されている。

産業に対する就業人気

情報サービス・ソフトウェア産業に対する人気も、産業が抱える課題の一つとして挙げられることが多い。
次図は、大学生の就職先の人気ランキングを、業種別に整理したものである。「ソフトウェア・情報処理」業に対する人気は、全14業種中11位に留まっており、上位の人気業種に押される状況となっている。

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業種別の学生の就職人気
(リクルート「大学生の就職志望企業(『採用ブランド調査2006』より)」を元に、みずほ情報総研作成)

情報サービス・ソフトウェア産業は、未来社会のインフラを支えるような重要産業であるにもかかわらず、 学生にとっての人気産業とは言えない状況にある。

また、産業に対する人気の低迷は、産業への就職を希望する人材の量・質の低下とともに、 その産業に関連する学問分野の人気の低下を招く可能性があり、この点も、やや懸念されている。

次図は、過去数年における、国公立大学の情報系学部学科の志願倍率の推移を示したものであるが、 左のグラフからは、情報系学部学科の志願倍率が、国公立大学全体の志願倍率よりも低い水準で推移 していることが読み取れる。さらに、右のグラフからは、少子化等の影響により、 国公立大学全体の志願倍率は低下傾向にあるが、情報系学部学科の志願倍率は、 全体よりさらに低下していることが読み取れる。

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国公立情報系学部学科の志願倍率の推移
(大手予備校の志願倍率データを元に、みずほ情報総研作成)

経済産業省が実施した産学協同事業において、学生に対して実施されたアンケートの結果は、 今の学生が、情報サービス・ソフトウェア産業に対して持っているイメージを把握することができる。
次図は、上記のアンケートにおいて、学生が、情報サービス・ソフトウェア産業に対して当てはまると思う項目を選択した設問の結果であるが、この産業が、「今後ますます成長する」と思う学生は、半分に満たない。また、「優秀な人材が集まる」、「世界に通用する企業が多い」、「国際的な競争力がある」などの項目について「そう思う」と回答した学生は2割にも満たない結果となった。
このアンケートに回答した学生の多くが、情報工学等を専攻する学生であることを考えると、このアンケート結果からは、現在の学生が情報サービス・ソフトウェア産業に対して抱いているイメージが、それほど輝かしいものばかりではないことが分かる。

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情報サービス・ソフトウェア産業に対する学生のイメージ
(H17・H18年度 経済産業省の教育訓練事業の受講者アンケートの結果から)
※ 上記アンケートはH17・H18年度の経済産業省の教育訓練事業の教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対して、それぞれ実施したアンケートの結果を合算したもの。(N=375)
※ 設問は、日本の情報サービス・ソフトウェア産業に当てはまるイメージ(「今後ますます成長する」「国際的な競争力がある」等)を、複数回答(回答数制限無)で選択するもの。

同様に、次図は、情報サービス・ソフトウェア産業での仕事に対する学生のイメージを尋ねた設問の結果であるが、こちらの設問においても、学生が仕事を選択する際の重要な要素であると考えられる「自分の仕事に誇りをもてる」、「夢がある」などの項目に対して「そう思う」と回答した学生は、2割に満たない結果となった。

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情報サービス・ソフトウェア産業の仕事に対する学生のイメージ
(H17・H18年度 教育訓練受講者アンケートの結果から)
※ 設問に対する注記は、前図と同じ。

なお、上のアンケートでは、学生が、産業についてのイメージをどのように形成するのかを把握するために、産業に関する情報の収集先もたずねている。以下に、参考までに、その結果を示す。

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【参考】情報サービス・ソフトウェア産業に関する情報の収集方法(複数回答)
(経済産業省「平成17年度 産学協同実践的IT教育基盤強化事業 事業報告書」)
※ 上記アンケートは、H17年度の経済産業省の教育訓練事業での教育訓練受講学生(主に情報工学系専攻)に対する 受講後アンケートの結果。(N=201)

 

以上、情報サービス・ソフトウェア産業の動向や同産業の重要性を示すとともに、成熟期を迎えたと言われる同産業が抱える課題を示した。 引き続き、「情報サービス・ソフトウェア産業における人材の重要性」では、この産業が抱える課題を検討する前提として、この産業における人材の重要性を示す。