高等教育機関における取り組みの現状

高等教育機関の問題意識

産業界から高等教育機関に対して寄せられている期待に対応すべく、高等教育機関側は、すでに動き出している。
次の図は、組込み技術に関する教育を実施している大学の教育方針を示したものであるが、 「産業界を支える技術者の育成」については、ほぼすべての教育機関が、 「非常に重視している」「重視している」と回答している。
この図に示されているように、現在では、多くの教育機関が、産業界の要望に応える意向を持っている。

組込み技術に関する教育を実施している大学が重視している教育方針
組込み技術に関する教育を実施している大学が重視している教育方針
(経済産業省「2006年版組込みソフトウェア産業実態調査-教育機関向け調査-」平成18年)
情報工学系学部においてカリキュラムや授業法を見直す必要性

情報工学系学部においてカリキュラムや授業法を見直す必要性
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

また、上の図は、情報工学系学部に対して、カリキュラムや授業法を見直す必要性を尋ねた調査の結果であるが、ここでも、9割を超える教育機関が、「見直しが必要」と答えており、多くの教育機関は、現行カリキュラムには改善すべき点があり、見直す必要があると考えている。

次の図は、カリキュラムや授業法の見直しにあたって重視する具体的な方法を尋ねた結果であるが、「ソフトウェア工学、システム設計、プロジェクトマネジメント等の従来より実践的な科目を増やす」という回答が最も多く挙げられており、先に述べた産業界や学生のニーズに対応しようとする教育機関側の姿勢が読み取れる。

カリキュラムや授業法の見直しにあたって重視するもの

カリキュラムや授業法の見直しにあたって重視するもの
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

以上のように、高等教育機関側も、すでに、産業界や学生のニーズに対応する十分な意向を持っている。 しかし、その実現にあたっては、様々な課題も見られる。

高等教育機関の教員の現状

実務経験を持つ教員の割合

企業実務に生かせるような実践的な教育を、実務経験を持たない教員が担当することは難しい。 そのため、実践的な教育の実施にあたっては、 まず、そのような教育を実施することができるような、実務経験を持った教員の存在が不可欠である。

IT分野の実務経験を持つ教員の割合

IT分野の実務経験を持つ教員の割合
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

上の図は、企業における実務経験を持つ教員の在籍割合を示したものであるが、 半数程度の教育機関でその割合が20%未満となっており、それほど高くはないことが読み取れる。
また、60%以上の教員が実務経験を持っていると回答した教育機関の割合は、非常勤講師では26.9%を占めているのに対して、専任教員ではわずかに9.5%となっており、非常勤講師に比べて、実務経験を有する専任教員は少ないという傾向がうかがえる。

実務経験を持つ教員の採用に対する姿勢

実務経験を持つ教員の採用に関する教育機関側の意向を示しているのが次の図である。 この図によれば、実務経験を持つ教員を「積極的に採用している」と回答した教育機関は、専任教員でも非常勤講師でも4割を超えている。 実務経験を持つ教員の在籍割合は、まだそれほど高くはないものの、 採用に対しては積極的な姿勢を持っている教育機関が多いと考えられる。

IT分野の実務経験を持つ教員の採用

IT分野の実務経験を持つ教員の採用
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

また、実務経験を有する教員を企業から採用する際の要件を示す下の図からは、 特に、専任教員に対しては要件が厳しく、博士号や研究業績を求める教育機関が9割を超えている ことが分かる。それに比べて、非常勤講師については、やや異なる基準を設けている教育機関が多いと見られるが、 研究業績を求める教育機関は、それでも6割近くに上っている。 また、専任教員の要件とは異なる基準として、非常勤講師に対しては、 「実務経験(年数)」などの業務上での実績が要件とされている。

IT分野の実務経験を持つ教員を企業から採用する際の要件

IT分野の実務経験を持つ教員を企業から採用する際の要件
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)
※ その他として最も多く挙げられたのは「実務経験(年数)」。その他には、「専門分野における業務実績・技術開発実績」、「担当分野の専門知識」、「教育に対する姿勢」、等が挙げられている。

次の図は、実務経験を持つ企業技術者の採用にかかわる課題・問題点を示している。 ここでは、採用そのものに関する課題として、
「候補者が教員任用基準を満たさないことが多い」
「専任講師、非常勤講師として適任かどうか評価するのが難しい」
などが挙げられている。
また、採用後の授業の実施に関する課題として、
「実務の知識・経験をどう授業に展開するかが難しい」
「生徒の知識が足りず、授業についていけるか不安」
「実務家が実践的な授業を行うための環境が不十分」
「授業外の指導が十分に行えない」
などが挙げられている他、
実務経験を持つ教員の募集に関する課題として、
「報酬が低いので、実務家にとって魅力がない」
「実務家を探すつてがない」
「企業の理解が不十分」
などが挙げられている。
これらの課題のうち、実務経験を持つ企業技術者の採用を困難にしていると考えられるのは、採用や募集に関する課題であり、
「候補者が教員任用基準を満たさないことが多い」
「報酬が低いので、実務家にとって魅力がない」
「実務家を探すつてがない」
「企業の理解が不十分」
などの事情により、企業技術者を積極的に採用したいという意向を持つ教育機関が多い割には、実際の採用は、それほどまでに進んでいないと考えられる。

実務家を教員として採用する際の問題点

実務家を教員として採用する際の問題点
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

 

企業との連携に対するニーズ

高等教育機関において実践的な教育を行う方法としては、実務経験を持つ教員を増やす他に、 教員が企業と連携し、企業技術者の協力を得て教育を実施するという方法がある。
次の図は、情報工学系の学部に対して、企業との連携の必要性を尋ねた結果であるが、 ここでは、8割近い教育機関が、「企業との連携は必要である」と回答しており、 多くの教育機関が、企業との連携を希望していることが分かる。

情報工学系学部における企業との連携の必要性

情報工学系学部における企業との連携の必要性
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

しかし、実際の企業との連携の状況を見ると、「企業の協力による授業や教材開発を行っていない」教育機関が65%にも上っており、教育機関側の希望に反して、企業との連携は、あまり進展していない現状がうかがえる。

企業と共同での授業・教材開発の実施状況

企業と共同での授業・教材開発の実施状況
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

また、次の図は、企業との連携に関する教育機関のニーズを示しているが、ここでも、 6割を超える教育機関が、「企業との協力・連携による講義や授業を増やす」と答えている。 これは、「企業からの専任/非常勤教員の採用を増やす」と答えた企業を上回っており、 実務経験を持つ教員の採用を強化するよりも、企業との協力・連携の強化によって、 授業やインターンシップ、教材開発等を実施したいと考えている教育機関が多いことが分かる。

企業との連携に対する教育機関のニーズ

企業との連携に対する教育機関のニーズ
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)

さらに、次の図は、寄附講座を実施する上での教育機関側の課題を、参考までに示したものであるが、実務経験を持つ企業技術者の採用でも挙げられた「企業へのアプローチの仕方が分からない」という課題が、ここでは最上位に挙げられている。この課題は、多くの教育機関が、企業と協力・連携するにあたって直面する共通の課題であると考えられる。

寄附講座を開設・運営するにあたっての課題

寄附講座を開設・運営するにあたっての課題
(経済産業省「大学における産学連携情報処理教育の現状に関する調査報告書」平成16年)